雪の轍 ネタバレ感想・解説

妻と自分の関係に似てる、と思いました。

というか、主人公が僕にそっくりなのです。

 

まぁ、こんな頭でっかちなブログを書いてる時点で、インテリぶってエッセイ家気取ってるのとほとんど変わらないですよね(笑)

時折好意的なお便りをもらうだけで舞い上がってしまう所なんて、もう、わかりすぎる…

 

さて、僕の悪癖として、時折妻を上から目線で批判したりバカにしたりしてしまう点があります
(これは本当に改善しなきゃいけないと反省しているのだけれど、未だに根絶できていない)
これがまた、本当に主人公そっくりで嫌になります。

 

主人公の気持ちもわかるんですよね…。

僕の妻も良く言えば純粋で楽観的、悪く言えば無防備な子です。
これが、僕から見るとなんとも危なっかしく思えるのです。

トラブルや悪意を想像する力が弱いと言うか、「なんとかなる」と信じ過ぎというか…。

まぁ、僕がひねくれたネガティブ思考で「人を見たら悪人と思え」な性格だから、そう思えてしまうのかもしれません。

(それにしても彼女は、我が家の資産状況や保険の契約内容どころか、自分の貯金額すら把握してないのだから恐れ入ります。)

この辺りは、寄付活動をしてるのに実務面がガバガバなニハルとそっくりです。

 

だからこちらとして『善意で』口を出してしまうんですよね。

客観的にみれば、上から目線の口出しなんですけどね。

映画の主人公がニハルに上から目線で「アドバイス」しているシーンでは、大変居心地の悪い思いをしました…。そうか、傍から見るとこんなにウザいのか…。

なお、実際に僕自身の危機管理が優れておるかというと、残念なことにそうでもなかったりしますが。

東南アジアに旅行したとき、しっかり観光客向け詐欺に引っかかっており、「私は大丈夫と思っている人こそ引っかかる」の典型例ですね…。

主人公も映画の冒頭で怪しい寄付の申し出に引っかかりそうでしたねぇ…。あはは、そっくり…。

 

そして夫婦喧嘩もなんか似てます。

彼女は論理より感情を優先させて、一方僕は理屈ばかり。 
「その解釈は論理的じゃない」「論点がずれている」「言ってくれたら対応するのに」とまくしたてます。

いつも喧嘩は平行線で、最後には彼女が泣き出します。

そんでもって「ハハハ、私のかわいいニハル〜」とか言って機嫌を取るのです。わかる。超わかる。

 

こういう僕だから、この映画には胸を締め付けられるようでした。

「いつか、妻の心が離れていく日がくるかもしれない」とザワザワした気持ちにさせられるのです。

なにせ主人公の執筆趣味も、インテリぶって悦にひたってるところも、喧嘩の仕方も、挙句の果てには口調までそっくり。

あの憎たらしい上から目線だって、妻から見たらきっとそのままなんだと思うと…。

 

だからこそ、ラストの描写に希望を託してしまうんですけどね。

 

幸いにして、我が家は今の所うまくいってます。

映画と違って、僕と彼女にほとんど年齢差がないのが良かったのかもしれません。

あるいは、映画では夫の経済力に妻が依存しているのに対し、うちでは同等だからでしょうか。

おかげで、僕が彼女を過度に子供扱いしてワンサイドゲームになることもなく、自然にお互いの意見は尊重する気風ができてます。

まあ、彼女の懐が深いだけかもしれませんが。妻に感謝です。

 

そうやって考えると、この映画の主人公夫婦には、実はけっこうな普遍性があるんじゃないでしょうか?

いわゆる「夫婦あるある映画」だと思うのです。

僕のように性格まで主人公と一緒、とまでは行かなくても、

年齢差や稼ぎを背景に一方的に意見を通す旦那さん、我慢する奥さんという構図はそこかしこで見聞きします。

 

またヨーロッパでも奥さんのことを「私の可愛い〇〇」にしがちだそうです。

日本では奥さんが家計を握るけど、イギリスなんかでは伝統的に夫が家計を管理し、奥さんに「可愛い無力な女の子」像を求めがち、とどこかで読みました。

(だこらこそレディーファーストなんて文化ができたんだとか)

つい奥さんを軽んじてしまったり、さらに「かわいい〇〇、無知な女の子」と女の子扱いして、行動に制限をつけていく

まぁ、日本でもありそうな話ですが。

この映画を観て不穏な気持ちになった男性、思ってる以上に多いのかもしれません。

 

そう言う意味では、かなり共感を呼ぶ映画と言えるかも知れません。

*******

それにしてもネジラには腹が立つますね。なんだあいつ!

感情を逆撫ですることしか考えていないというか、議論を拒否してますよね。

相手が意見を言っても、皮肉を言う、嫌味を言う、鼻で笑って顔を背ける。
この「鼻で笑って顔を背ける」ってホント腹立ちますね。言い返せなくても、相手を蔑んで優位に立ちたいんですよね。卑怯だ!
結局本質的には何も言い返せていないのにね!!(鼻息)

…まぁ、彼女の行動も、理屈っぽくていつも言いくるめられる兄に対抗するために編み出された手法なんでしょうね。 

 

そういう意味では「相手の感情を逆撫でる」という本来の効果はしっかりでてるわけで、成功なのかもしれません。

僕も思考回路が主人公そっくりだから、ついつい一緒に腹が立ってしまったのでしょう。

そういえばこの映画の監督も、ロシア文学とかに造形が深いそうで、似ているタイプなのかもしれません。インテリぶってそうです(失礼)

もしかしたら、自分の心をざわつかせるシーンをつくったら、思いのほか普遍性があった…ということなのかもしれません。

まぁ、冷静に考えたら普遍性を持つのも納得です。

なにしろカンヌ映画祭の大賞の映画を進んで観る層の男性なんて、多かれ少なかれ主人公みたいにインテリ批評家ぶってるんでしょうから(笑)

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