インセプション 誤解されがちな夢と虚無の構造&ラストをネタバレ解説

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説明が少ないため、分かりにくい、謎が残るという感想を持たれがちな映画ですが、ルールや構造をしっかり把握すれば、ちゃんと理解できます。

夢と覚醒の基本ルール

夢の中では基本的に死亡して覚醒することが一般的なようです。

ただしこの映画では、ほとんどがキック(三半規管に衝撃を与えること)で起きています。
基本的には現在の夢階層でのキックで目が覚めますが、上の夢階層や現実で衝撃が加えることでも、下の夢階層が大きく揺れ、その衝撃でキックされて目が覚めると考えられます。

(劇中でも、現実のコブをバスタブに倒したら夢の中でも鉄砲水に吹っ飛ばされたり、上の階層でのカーチェイスでホテルの廊下がぐるんぐるんしたりしてましたね)

「虚無」とは

映画の中では「Limbo」と呼ばれる世界。「何もかも忘れてしまう忘却の空間で、精神が迷子になってしまう場所」「形の無い夢。潜在意識以外何も存在しない」とされます。日本語訳だと「虚無」ですが、訳としては正直微妙。

「虚無」でなく「忘却の夢」と呼んだ方が理解しやすいかもしれません。

ここに落ちてしまうと基本的に何もかも忘れてしまうため、自分が何故ここにいるのか、覚醒しようという意識すらなくなってしまいます。なおかつ、現実で目が覚めても意識が戻らない(あるいは戻っても、まるで「虚無」の中のようにぼんやりと過ごす?)ことになってしまいます。
ただし他の夢と同様、自分の意志で降りた場合は記憶や意識が維持されます。

なお、ネット上で一番混乱しているのが虚無の扱いです。

ネットでは虚無を「第4階層」と定義していることが多いですが、虚無は単に「忘却状態の夢」というだけ、第4階層とは限りません。
映画では第3階層でロバートが死んだので第4階層が「虚無=忘却の夢世界」になりましたが、もし第1階層の夢世界で死ねば、「虚無=忘却の夢世界」はひとつ下の第2階層ということになるでしょう。

また、コブとモルの世界は虚無とは別物なので注意していください。

特殊ケース1 コブとモルの世界

以前コブとモルがプライベートで作り上げて楽しんでいた夢。興味本位で深い階層まで潜っていました。
「現実に戻るには死ぬしかなかった」という発言がありましたが、これは夢の中で現実の建物をつくりだして楽しんでいたため、次第に現実との境が曖昧になり、覚醒しづらくなったためです

※この世界は「虚無」ではないことに注意!

ポイント:現実の世界を再現しすぎたため、この世界では死亡でしか覚醒できない。

なお、50年ほど滞在したという発言から、おそらく第4階層程度まで到達していたと思われます。

  • 第1階層 8時間×20=160時間
  • 第2階層 8時間×20×20=3200時間
  • 第3階層 8時間×20×20×20=64000時間 約7.3年
  • 第4階層 8時間×20×20×20×20=1280000時間 約146年

特殊ケース2 強力鎮静剤使用下の夢世界

映画のメインストーリーである夢世界。3階層で設計された。
ここでは強力な鎮静剤を使用しているため、夢の中で死亡すると覚醒せず「虚無に落ちる」=「全てを忘れて1階層下の夢世界に落ちる」ため、それ以降は自力での覚醒が不可能になる。非常に危険。

ポイント:鎮静剤が強すぎるため、この世界ではキックによってしか覚醒できない。

特殊ケース2 第4階層 ロバートの「虚無」

鎮静剤下の夢でロバートが射殺されたことによって、ロバートが虚無(忘却の夢世界)に落ちてしまいました。この場合第三階層で死んでしまったため、忘却の夢世界(虚無)はひとつ下の第四階層ということになります。

本来であればロバートの精神は戻ってくることは出来ません。
しかし、夢共有装置により、コブとアリアドネがロバートの虚無(忘却の夢世界:第4階層)に一緒に降りました。死亡によって忘却の夢世界に降りると何もかも忘れて精神が迷子になってしまいますが、他の夢と同様、自分の意志で降りた場合は記憶や意識が維持されます。

そしてビルからロバートを落下させることで「キック」して意識を覚醒させ、直後に第三階層で心臓に電気ショックを与えることで蘇生させました。

アリアドネの台詞を英語で聞いてみれば「ロバートの世界に降りる(fall down)」「彼を見つけて、音楽を合図にkickする、そして電気ショックで蘇生する」と説明しています

また、アリアドネはビルから落下の加速度で、三半規管に衝撃を与え、自らをキックして第3階層に戻ったと考えられます。

ポイント:ロバートは第4階層の夢世界に落ちたが、キックされて第3階層に戻った

また、コブが「サイトーがもうすぐ降りてくるころだ、探しに行く」と虚無に残りますが、これは「第三階層のサイトーはそろそろ死んでしまうので、第4階層の虚無に落ちる頃だ」ということです。夢共有装置により同じ第4階層に降りてくるのですね。

サイトーは意識や記憶をなくし、第4階層の虚無を彷徨いますコブがようやく再会したときには、しわくちゃのおじいさんです。第4階層では現実の2.7時間が50年にも感じられるので、あんなしわくちゃのおじいさんになるわけです。ひょっとしたら100年以上経っていたかも知れません。

一方、コブはこれを夢だと認識しているため、年を取りません。

ポイント:サイトーは記憶をなくし、ここが夢だと認識していなかったため年を取った。

夢の階層とキックの整理

現実 (`・ω・´)

夢第1階層:都市(車が橋からジャンプする衝撃(失敗)&着水する衝撃でキックされ、現実に目覚める)

夢第2階層:ホテル(エレベーターを爆薬で吹き飛ばす衝撃でキックされ、夢第1階層に目覚める)

夢第3階層:雪山(爆薬で基地の柱を吹き飛ばした衝撃でキックされ、夢第2階層に目覚める)

夢第4階層(虚無):コブとモルの街(アリアドネとロバートは落下の衝撃でキックされ、夢第3階層に目覚める)

ラストの謎:あれは夢か現実か

ラストで年老いたサイトーは銃に手を伸ばしていましたが、これは現実への帰還を意味しません。虚無の世界とはいえ、鎮静剤使用下の夢です。銃殺=覚醒ではありません。

ここでモルの夢と混同している人もいますが、それぞれ別の特殊ケースです。モルの時は虚無でもなく、死亡で覚醒します。
またアリアドネは自殺したから第三階層に戻ったのでなく、落下による三半規管への衝撃(キック)で戻りました。

むしろ、帰還目的でなく、数十年間を孤独に過ごしていた怒り・恨みからコブを銃殺したと言う説です。
なにしろ本来は「死ねば夢から覚める安全な体験」です。コブが故意に「強すぎる鎮静剤を使ったため、虚無に落ちる」事実を隠していたため、サイトーはこんな目に遭ってしまったのです。
もちろん虚無を彷徨っているサイトーはそんな事実すら忘れていますが、コブに遭って全てを思い出し、自分を何十年も苦しめた彼に仕返しをする可能性は大いにあります。

(この場合、第四階層で射殺されたコブは第五階層の虚無に落ちます)

もうひとつ、悲しい仮説もあります。
体感時間にして数十年の長すぎる捜索期間のせいで、コブの記憶もだんだん摩耗してきて、「死ねば虚無に落ちてしまう」という注意事項を忘れてしまった可能性です。
あるいはそんなとき、彼の心にこんなアイデアが残ったかも知れません。

“この世界は現実じゃない”
“目覚めて現実に戻らないといけない”
“家に戻るために…”
“自殺しないと”

やはり、あれは夢だったのでしょうか…。

一方、あれは現実のハッピーエンドだとする説もあります。
回想に出てくる子ども達と、ラストのシーンでは服や靴の色が違うというのです。
確認してみたところ、確かにものすごく似てるけど別の服です…!!
(お姉ちゃんの肩が回想だとピンク、ラストだと白。スカートのひだひだの幅も違う。息子君の服もデザインに似てるけど色が微ッ妙に違う!)

上が回想シーン、下がラストです。

また、エンドクレジットを観ると、回想とラストで姉弟にそれぞれ別の人間、合計四人がキャスティングされています。あえて違う子役を使うことで、現実の子どもの成長を表現している証拠とも言えます。(たしかに、見比べてみるとお姉ちゃんはかなり身長が違いますね。)

わざわざこんな仕掛けを残すのだから、やはり現実だ!という説もうなずけます。

意識さえ戻れば、帰還する方法はたくさんあります。銃に手を伸ばしたがやっぱりやめて、お互い何らかの手段でキックをしたのかもしれません。普通に鎮静剤が切れたかで、先に目覚めたユスフが鎮静剤を打ち消す処置をした可能性もあります。

最後に、クリストファー・ノーラン監督はラストに関する明言を避けていますが、こんな言葉を残しています。

一番大切なことは、最後のシーンでコブがコマを見ていないということだ。
あの時、彼はコマでなく子供たちを見つめていた。
彼はコマを捨てたということなんだ。

ただ派手で難解なだけでなく、皆が共感できる深いテーマをはらんでいるからこそ、ここまで愛されているのでしょうね。

おまけ

エディットピアフ 水に流して

水に流して   岩谷時子 訳詞

もういいのもう後悔しない
昨日のことは全て水に流そう

もういいのもう後悔しない
みんな今じゃ過ぎた昔の事

過去は全部焼き捨てたわ
思い出にも用はないわ
恋もすべてきれいにした
ゼロからまたやりなおそう

もういいのもう後悔しない
昨日のことは全て水に流そう

もういいのもう後悔しない
新しい人生が今日から始まるのさ

これを20倍にスロー再生すると…!

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