イミテーションゲーム よくわからないところ解説・考察・ネタバレ感想

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imitation
とても面白い映画でしたが、少し分かりにくいところも多かったです。「CILLY」の謎、リンゴと青酸カリの伏線、政府はなぜ公表しなかったのか、スパイを見逃していたのはなぜなのか…ひとつひとつ解説していきたいと思います。
映画「イミテーションゲーム エニグマと天才数学者の秘密

あらすじ

第2次世界大戦下の1939年イギリス、若き天才数学者アラン・チューリング(ベネディクト・カンバーバッチ)はドイツ軍の暗号エニグマを解読するチームの一員となる。高慢で不器用な彼は暗号解読をゲーム感覚で捉え、仲間から孤立して作業に没頭していたが、やがて理解者が現れその目的は人命を救うことに変化していく。いつしか一丸となったチームは、思わぬきっかけでエニグマを解き明かすが……。

yahoo映画より

予告編

「CILLY」の謎

映画の中では、ジョーンの友人が言っていた「ドイツのある無線通信士はいつも最初に『CILLY』の5文字を打つから、彼女がいると思ってた」という言葉が、暗号解決のヒントになりました。

今まではマシンの性能向上ばかり考えていましたが、主人公はジェーンの友人の言葉から「その暗号文の中に必ず含まれる単語をヒントとして与えれば、マシンの暗号解読がずっと早くなる」というアイデアに気づいたのです。
いくら主人公が開発したマシンでも、すべての可能性を総当たりしていては暗号解読に時間がかかりすぎていたのですね。

そこで主人公達は毎朝6時に打電される「天気予報」に目を付けます。その文章の中にはいつも「6時」「天気」「ハイル」「ヒトラー」という単語が含まれていたからです。

そしてとうとう主人公達は「エニグマ」の解読に成功します。

ただ、僕は映画を観ながらどうしても理解できなかったのが

「ドイツのある無線通信士はいつも最初に『CILLY』の5文字を打つ」

という部分です。
これ、おかしくないですか?

だって、『エニグマ』は、毎日暗号パターンを変更するシステムです。(映画の中でも、12時の時計の音でみんな落胆…という描写がありましたね)

たとえば、ある無線通信士が毎日最初に「HELLO」と打電していたとします。

すると一日目は

  • 一日目「HELLO」→「CILLY」

と暗号化されるかもしれません。
でも二日目、三日目になると暗号変換の設定が変更されます。

  • 二日目「HELLO」→「FRPPQ」
  • 三日目「HELLO」→「JKOOM」

といった具合に、同じ単語でも別の文字列に変換されてしまうのです。
エニグマのシステムでは、「いつも同じ五文字で始まる」ということはあり得ないはずなのです。

では、なぜこのようなことが起こったのでしょう?

答は、考えてみれば当たり前の話です。
『エニグマ』のシステムを正しく運用していれば起こりようがないことが起こっている。これは、現場レベルでの『エニグマ』運用の手抜きからくる失敗なのです。

可能性1 暗号設定を変更しなかった

エニグマは毎日暗号設定を変更することで、解読を難しくしていました。しかしその方法は、「決められた月間予定表に基づき、毎日手動で設定変更を行う」というちょっとばかし面倒なものでした。

中には一組ぐらい「俺たちは、面倒くさいからこの設定のままでいこうぜ~」という横着なバカがいたかもしれません。
(この場合バレたら処分モノなので、その周波数を利用する送信者&受信者が気心しれた相手同士かつどちらもバカの場合に限られますが。)

可能性2 「CILLY」が何かの符丁である。

文頭に「CILLY」とつけた場合のみ特別なメッセージがこめられている場合です。
ただ、暗号打電の際にこんなことする必要性がさっぱり思いつきませんが…普通に暗号で良いだろ…。たとえば本当に彼女の名前を暗号文の最初にうつとか、でしょうか…。やっぱりバカですね。

史実では

実際にはここまでお馬鹿な例は少なかったでしょうが、史実でも暗号解読班は「エニグマ運用上の人為的ミス」を、まとめて「CILLY」と呼んでいました。「CILLY」の綴りがあったとは限らないのです。

たとえば、メッセージ鍵というモノがあって、文頭にランダムな3文字を選んでうつルールがあるのですが、だんだんめんどくさくなったエニグマのオペレーターが毎回キーボードの左端の“QWE”で済ませてたら、解読の大きな足掛かりになってしまったり…

ただ、これらを映画で説明するにはちと小難しいですよね。
そのため、インパクト重視の展開のために「毎回最初に『CILLY』って五文字を打電する送信者」の話を創作して、「それをヒントに解決策を閃く」という流れを無理矢理こじつけたのが本当のところだと思います(苦笑)




リンゴと青酸カリの伏線

冒頭、泥棒に入られた主人公の家のシーンで「深く息をするな。青酸カリがある。」というシーンを覚えているでしょうか。

そしてコミュ障な主人公が、みんなと仲良くしようと青リンゴを配ってジョークを飛ばすシーンを、覚えているでしょうか。

実はこれ、映画だけでは気づけない悲しい伏線なのです。

映画のラストで、主人公は自ら命を絶ってしまうことが明かされます。実はこのとき彼の自殺方法は「青酸カリ入りのリンゴを囓る」というものだったんです。

「リンゴ」に、「青酸カリ」。
なにげない単語に、そんな切ない伏線が隠されていたんですね…。

なお、MacやiPhoneで有名なApple社のロゴは「かじられたリンゴ」ですよね。これ、コンピューターの産みの親であるチューリングの死因に由来している…という説もあったりします(# ̄ー ̄#)ニヤリ

ジョブスは否定していたようですけどねー。

本当に自殺だった?

しかし彼の死因は本当に自殺だったのでしょうか?
彼が青酸カリを持っていたこと自体は彼が金メッキの実験をしていたことから不思議ではありません。(メッキの際に青酸が必要らしいです。)

しかし、彼は死の当日にも大学に機材の貸し出し許可を申請しており、自殺ではなかったとする説もあります。

それに僕個人の印象ですが、自殺するのにわざわざ「青酸カリ入りのリンゴ」をつくるだろうか?という不思議さもあります。普通に青酸カリで良いじゃん。

彼の死因については、「ベッドで青酸カリで死んでいた」「そこにかじりかけのリンゴがあった」という状況証拠から導かれています。(ネット上では「青酸カリのべったりついたリンゴ」とする記述もみかけます)

あ、怪しい…

ただ、チューリングが映画「白雪姫」を観た後で「魔法の秘薬にリンゴを漬けよう。永遠の眠りが染み込むように…。」と呟くのを同僚が聞いていたというエピソードも見つけました。

自殺なのか?事故なのか?口封じの他殺なのか?
今となっては真相は闇の中です。

deathpaper

チューリング死亡時の医師の診断書(引用元
下から七行目には「口からかすかなビターアーモンドの香りがしていた」と青酸カリを連想させる記述が。下から三行目にはリンゴの記述も。




政府はなぜ公表しなかったのか

戦争が終わった後、イギリス政府は暗号解読チームに解散を命じ、エニグマ解読の真実を極秘扱いとしました。

これについて、うちの嫁から「なんで内緒にしたの?(・ω・`)」と聞かれて僕は次の2点が理由じゃないかと答えました。

  1. ドイツと再び戦争を起こす可能性があるため。
  2. エニグマを解読できていたのに見殺しにした人達がいるため

1の理由は分かりやすいですね。
もしもドイツと再び戦争になったとき、こちらがエニグマが解読できることを内緒にしておけば、またドイツ軍はエニグマを使うかもしれません。
うっかり「もうエニグマは解読できるんだぜ~!」なんてドヤ顔しちゃえば「え…じゃあ違う暗号にしよ…」って対策されちゃいますからね。

ドイツ以外の国と戦争になったとしても「イギリスは暗号を解読できるぞ」と警戒されるより、無警戒でいてくれたほうがずっと都合がいい。

だからエニグマを解読できることは黙っていた方が得なんです。

2の理由は、劇中でも示されていましたね。
エニグマを解読した結果、チームはピーターの兄が乗っている戦艦が潜水艦に狙われていることを知ってしまいました。その結果は…見殺し。

イギリス政府は「エニグマを解読できる」という優位を守るために、何千人もの兵士を、民間人を、見殺しにしたのです。
もちろん何十万人、何百万人を救うために、「エニグマ」解読の秘匿は絶対に必要でした。
多くを救うために、犠牲を決断する。たしかに大局をみれば正しい戦略なんです。

でも、犠牲になった人の遺族に、そんな理屈は通じません。
政府に裏切られた、うちの息子は国に殺された…。人道的にも政府に対する批判が巻き起こります。戦争に勝つために民間人を犠牲にしたと公言した政党が、次の選挙も勝てるでしょうか?

以上「ドイツと再び戦争を起こす可能性」と「見殺しにした人達がいる」という二つの理由が、エニグマ解読を秘匿した理由です

…と、思っていました。

現実は、もっとえげつないものでした。

第二次世界大戦を終えたイギリス政府は、ドイツから押収したエニグマ暗号機を中南米やアフリカの国々に売却したのです。
「これ、絶対に解読できないドイツの暗号機だよ☆」なんて嘘ついて。

当然中南米・アフリカの諸国は喜んでこれを使い、各国の機密情報をエニグマを使ってやりとりしてしまったのです。
エニグマ解読技術をこっそり持っていたイギリスはもちろんそれを極秘に解読!
外交交渉で優位に立つのはもちろん、これらの国が植民地からの独立を企てればそれを“秘密裏に”阻止していたのです。

…あくまで例えですが、独立を宣言したリーダーが急死すれば暗殺を疑われますが、極秘に行動してる最中に急死したら「ただの事故」、ですよね…。

さすが、スパイの国イギリス、「二枚舌外交」のイギリス。
こと「情報戦」においては、何枚も上手です。
権謀術数が蠢くヨーロッパで何世紀にも渡って君臨していただけのことはありますね…。




なぜ主人公はケアンクロスがソ連のスパイと気づいたのか?

発見されたスパイの暗号文ですが、これはヒューが聖書の一節「マタイ福音書7章7節」を使って作られたものだと見抜きました。(ヒューと主人公とのバーでの会話で語られていますね。)

一方、主人公はケアンクロスの机に、隅を折った聖書をみつけてしまいます。その折られたページは、「マタイ福音書7章7節」でした。

しかし、スパイにしてはかなりお粗末な発覚ですねぇ…。
ま、映画の展開上の都合ということで。

なおケアンクロス氏は実在のスパイです。
それもイギリスに潜入していた5人のソ連のスパイ、ケンブリッジファイブのメンバーです。

ケンブリッジファイブとは、長年イギリスを悩ませた有名な5人のスパイのことです。当時ケンブリッジ大学で共産主義に傾倒していた5人の学生をソ連がスカウトし、優秀なスパイに仕立て、イギリスの中枢に忍び込ませたのです。

ほかのメンバーには、リーダー格の存在として、イギリス諜報部MI6の次期長官にまでなったキム・フィルビーがいます。
彼のMI6乗っ取り事件は、陰謀渦巻く大人のスパイ映画『裏切りのサーカス』のモデルとなっていますよ!

裏切りのサーカス カーラの謎と伏線をネタバレ解説
007に代表されるような華やかなスパイ映画でなく、実際のスパイ機関の攻防を描いた、しっとりどっしりとした大人な映画。 スパイ組織に...

ほかにもBBC出身ガイ・バージェスは、映画「アナザーカントリー」のモデルとなっています。無垢な青年が同性愛への偏見の中で苦しみ、徐々にイギリス社会を、資本主義を見放していく様子が描かれています。

イギリス王室の弱みを握った王室美術顧問サー・アンソニー・プランなどがいます。彼は別に映画になっていませんが(笑)
それにしても、なんか暗号解読班に、王室美術顧問に、情報機関上層部にそれぞれメンバーを送り込むだなんて…なんだか少年漫画のような世界ですねぇ…。

なぜロシアのスパイを見逃していたの??

MI6のスチュアートは、「ケアンクロス」がソ連のスパイだと最初から気づいていました。スパイだと気づいておきながら、あえて知らぬふりをしてエニグマ開発チームに潜り込むのを黙認していたのです。
いったいこれはなぜでしょうか?

当時、イギリスとソ連は協力体制にありました。
ヨーロッパを蹂躙するナチスドイツを共通の敵として、情報共有や軍事協力をしていたのです。

しかし、「敵の敵は味方」と簡単にはいかないのが外交の難しいところです。
もともとソ連はヨーロッパの領土を狙っていました。
ドイツという強敵を排除するためには力を借りねばなりませんが、ドイツを倒した後には今度はソ連がイギリスの敵となることはわかりきっていたのです。

だから、出来ればソ連にはイギリスの情報、特に軍備や技術力の高さは隠しておきたいのです。

一方、ソ連はソ連で、イギリスがこちらを信用していないこと、正しい情報を渡してくれないことに気づいています。(なにせ相手は『二枚舌』のイギリスですからね)
お互いに疑心暗鬼になり、せっかくドイツに関する役に立つ情報を渡しても、信じて活用してもらえないという困った事態になってきました。

ソ連もせっかくの情報が活かせないのでは不利を被ります。
だったらこっそりイギリスから正しい情報を盗み出してやろう!とロシアはイギリスにスパイを忍び込ませたのです。

ところで敵のスパイを見つけたときの対処法って、ご存じですか?
見つけ次第殺す?拷問にかけ情報を引き出す?
実は一番いい方法は「気づいていないフリをする」ことなんです。

まず、スパイを殺したり、拷問するのはもってのほか。相手はあっさり手下を見捨て、こっそりと新たなスパイを送り込むだけです。

だから、あえて気づいていないふりをするんです。
平時は、スパイを通じて相手にどんな情報がいくのか、こちらが把握しておくことができますし、信用してくれない相手に正しい情報を渡すこともできます。
ソ連は、イギリスから渡した情報は信用してくれないけど、自分のスパイが盗み出した(と思っている)情報は信用しちゃうんですね。

そしていざという時はケアンクロスに偽物の情報を流したり、手紙を改竄することまでできるのです。
相手に「うちのスパイがみつけた重要機密だ!これはすごい!」と信じ込ませれば、間違えた判断を誘発することも出来ます。
簡単な例だと「北の方から大軍で攻める」という機密をケアンクロスに知らせておいて、北の防備を固めたのを見計らって南から攻める、とかですね。

(これは、濫用するとニセ情報を渡してるとバレちゃうので、いざというときに温存していたでしょうが)

主人公がジェーンを急に遠ざけたのはなぜ?

主人公は婚約していたジェーンを急に遠ざけ、チームから外そうとしました。
これは直前のシーン、MI6・スチュアートとのやりとりに端を発っします。

帰宅した主人公は、こっそり研究室から持ち出した資料をスチュアートがみつけた現場に遭遇し、焦ります。持ち出し禁止の極秘資料を研究室の外で所持していた時点で、スパイの疑いをかけられて当然だからです。(しかも彼はただでさえスパイを疑われている身です。)

主人公は、自分や彼女は決してスパイでない、本当のスパイはケアンクロスだと必死に訴えます。
ところが、スチュアートはそれを既に知っており、わざと泳がせていたと話します。
情報戦、スパイ戦の恐ろしい世界を垣間見たんですね。

ここで、よく考えてみてください。
主人公は偶然ケアンクロスが真のスパイだと気づいていましたが、もし本当のスパイが誰だか知らなかったらどうなっていたでしょうか?

スパイ疑惑というのは「魔女裁判」であり「悪魔の証明」です。
「スパイであること」は証拠を突きつければ証明できるのですが、「スパイでないこと」はどうやったって証明できないのです。
そもそも「スパイでない証拠」なんてものがあるのだとしたら、世界中のスパイがそれを準備しておくでしょうしね。

悪魔の証明
「悪魔はいない」という主張に対し「この世のどこかには悪魔はいるかもしれない!全ての世界を見てきたのか!」と反論されてしまい、もし仮に「世界中を見てきたけどいませんでした」と言っても「悪魔が姿を消せるとしたら?!どうやって証明する?!」と無限の可能性を示されて証明できなくなるジレンマ。

ただでさえ疑いをかけられてた上に、「機密文書の持ち出し」という証拠を掴まれた主人公と彼女は絶体絶命でした。
おそらく、スチュアートはこのスパイ疑惑をネタに、主人公の弱みを握るつもりだったのでしょう。(本当は主人公達が潔白だと知っていながら!)
スチュアートが、あるいはMI6がその弱みを何に利用するつもりだったかはわかりませんが、彼のような天才的な頭脳を思い通りに利用できるのは政府にとって大きな魅力です。

ところが、スチュアートにとって誤算だったのは、主人公が真のスパイを誰か知っていたことです。

もし主人公に「俺たちじゃない!本当のスパイはケアンクロスだ!」と騒がれたりしたら、あえて泳がせていたケアンクロスをスパイとして捕らえざるをえません。それはMI6にとって「損失」です。

だからあのシーンは主人公にとっては「九死に一生を得た」シーンであり、スチュアートにとっては「当てが外れた」シーンなのです。

ここでようやく「なぜ主人公がジェーンを遠ざけたか」の疑問に戻ります(笑)

主人公は、MI6の本心に気づいたのです。
彼らは、たとえ道義を犯してでも、機会があれば弱みを握ろうとする存在だったのです。

あるいは、国家の利益のためなら小さな犠牲を厭わないその姿勢は、「エニグマ」を解読できたのに部隊を見捨てた主人公達と同じ思考回路なのかもしれませんが…。

主人公は悟ります。このままでは、いつか自分達が「国のために」犠牲にされる日が来るかもしれないと。
あるいは口封じかもしれません。あるいはジェーンを人質にとって主人公になにかを強要するのかもしれません。どちらにせよ、彼女が主人公の「大切な人」である限り、MI6はそれを利用するのを惜しまないと悟ったのです。

MI6から彼女を守りたかった。それこそが、主人公がジェーンを遠ざけようとした理由です。

婚約が破談になったことで、周りから見ると彼女は主人公の「大切な人」でなくなりました。
結果的に彼女はMI6に狙われることはなくなり、主人公の「彼女を守る」という目的は達成されました。

でも、その後彼女は別の男性と結婚。幸せに暮らしました。

なんだか、悲しい話ですね(´・_・`)




化学的去勢とはなにか

主人公が同性愛で逮捕された時、服役か化学的去勢かどちらかを選ばされました。

ここでいう化学的去勢とは、ホルモン剤の投与による性衝動の抑制です。

大量の疑似ホルモン剤を投与すると、性ホルモン分泌器官が「これ以上の性ホルモンは不要」と判断して機能を停止します。性的興奮を司る性ホルモンが分泌されないなので、患者は性衝動が起こらなくなります。
また、それを継続的に続けることで、次第に分泌機能とともに睾丸が萎縮していき、使い物にならなくなります。

人によっては投与をやめれば元に戻っていくこともあるようですが…。

ただ、ホルモンバランスの乱れというのは心身に大きな影響を与えます
女性の生理や妊娠なんかでもそうですよね。健康の人のホルモンバランスの移行でさえ、精神的に不安定になったり、パフォーマンスが低下したりするのです。
睾丸が萎縮するほどの大量のホルモンを投与した場合、よくない影響がでる可能性は十分考えられます。

チューリングが自殺してしまったのは、治療による精神不安定や、能力低下への絶望なども原因として考えて良いと思います。

なお、この化学的去勢、実は現代でも性犯罪者への矯正手段として採用している国もあります。アメリカの一部の州、カナダ、ドイツ、オランダ、ポーランド、スイス、北欧、韓国など。

※強制的な「刑罰」ではなく、性的倒錯者への「治療」という建前だそうです。




この映画はどれくらい本当なの?

大まかな話はだいぶ本当ですが、暗号解読班の規模は大きく違います。
映画では数人の精鋭チーム、といった描かれ方をしていましたが、実際には数千人規模だったそうです。
ただ、チェスのチャンピオン、トランプの名人、古典言語学者、美術の専門家、クロスワードマニア、焼き物の名人(←!?)、そして変わり者の大学教授といった個性あふれるメンバーが中核を成していたのは事実です。

主人公達が開発したマシンの性能に関しても、ちょっと盛ってますね(笑)

そもそも、エニグマは決して解読不可能ではなく、「CILLY」なんかのヒントを活用すれば、マシンなしでも数時間がかりで暗号を解読できたこともありました。
マシンを使っても、「ヒントをいれたら数十秒で解読できた」という劇的なものでなく、「数台繋げてヒントをいれたら一時間くらいで解読できた」というレベルのものだったそうです。
映画ではインパクトを重視するためにかなり誇張されてるんですね~。

ま、敵の暗号を一時間で解けちゃうのは十分素晴らしい性能なわけですが。

また、これだけ規模の大きいプロジェクトですし、軍事的に重要な情報ですから主人公達のチームが暗号解読したあと「どの部隊を見捨てるか」と独断で情報の取捨選択をしていたとは考えづらいですね。
解読した暗号はすべて情報機関MI6にあげられ、軍の上層部で判断されていたと思われます。

最後にタイトルの意味について

イミテーションゲームとは、チューリングが実際に提唱した人工知能に関する理論です。

イミテーションゲームとは、コンピューターの思考能力を評価するために行なわれるゲームのことである。人工知能(AI)の開発に利用される。

コンピューターと人間に同じ質問をして、それぞれがどちらの回答であるかを隠し、第三者に提示してどちらがコンピューターの回答であるかを判定させるというものである。人間とコンピューターの区別が付かないならば、そのコンピューターは優秀である(より人間に近い)とされる。

引用:weblio辞書

でも、人間ってなんなんでしょうか。
まっとうな回答ができなかったら、人間じゃないのでしょうか。

主人公は人付き合いの苦手さや、同性愛であることを自覚していました。

最近でこそセクシャルマイノリティーへの理解も進んできましたが、当時は相当に厳しい目で見られ、「社会的不適格者」として扱われていました。
同性愛の性的指向をもつことを恥じて、思い悩んでいたことは十分考えられます。

どこか欠落している自分は、果たして本当に「人間」なのか?
あれだけ素晴らしい頭脳をもっていても、ずっと「自分は一人前の人間だ」と信じることが出来ず、消して拭えないコンプレックスを抱えていたんだと思います。

…もしかしたらこの物語は、いや、彼の人生こそがずっと“イミテーション・ゲーム”ーーー自分が人間である確信を求める旅ーーーだったんじゃないでしょうか?

そんなことを考えると、本当に切なくなるのです。
きっと彼に本当に必要だったのは、こんな立派な映画じゃない。隣で自分の存在を肯定してくれる誰かだったんだって。

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