映画「ファウンダー」の三つのトリビア/三度の結婚と実娘、マックのロゴ、口約束の真実

映画「ファウンダー/ハンバーガー帝国のヒミツ」は実話を元にした映画ですが、事実を微妙に誇張していたり、マクドナルド社への配慮(?)があったりします。
個人的に興味深かったのでまとめました。

1.レイ・クロックは3回結婚しており、最初の妻の間には子供もいた

映画を観ていると「長年二人きりで過ごしていた妻エセルを捨てて、別の女(ジョアン)に乗り換えた」と解釈できますが、実際は少し異なります。

まず、最初の妻エセルとの間にはマリリンという娘がいます

エセルと結婚して二年目に産まれた子供なので、「エセルはいつも一人でレイの帰りを待っていた」という描写は少し誇張していると言えるかもしれません。
(もっとも、夫との交流が少なく精神的に孤独だったという意味では、あながち間違いでもありません。)

レイとエセルは40年間の結婚生活の末に離婚します。離婚時には娘のマリリンはもう38歳。立派な大人ですね。
両親の熟年離婚については「二人の好きにしたら」という年齢でしょうし、映画には登場させなかったのかもしれません。

また、映画では「エセルからジョアンに乗り換えた」と解釈できるような描き方をしていますが、これも少し違います。

なにしろ、エセルは一人目の妻で、ジョアンは三人目の妻だからです。

レイはエセルと離婚した1年後ジェーン・グリーンという女性と二度目の結婚をしております。
この結婚は5年間ほど続きますが、またしても離婚。

ようやくジョアンと結婚するのは、さらにその2年後です。
つまり、エセルと離婚してからジョアンと再婚するまでは、8年間もの開きがあるのです。

また、「エセルからジョアンに乗り換えたんじゃなくて、エセルからジェーン・グリーンに乗り換えたから一緒だ!」と解釈されるかもしれませんが、レイがジェーン・グリーンと出会ったのはエセルとの離婚後とされています。(出会って二週間後というスピード結婚!!)参考リンク

つまり、レイとエセルの離婚は「別の女に乗り換えるため」ではなく、単純に夫婦関係が破綻したためと考えるのが妥当です。

2.利益の1%という「紳士協定」は本当に存在したのか?

映画の終盤、マクドナルド社に関する契約が交わされました。
「マクドナルド社の権利をレイに渡す代わりに、兄弟に270万ドルと、永久に毎年の利益の1%を渡す」「ただし毎年の利益の1%については、契約書に残さない紳士協定としてほしい」

そしてエンドロールで、この紳士協定が守られなかったことが語られました。レイクロックひどいやつ。

ところがこの「紳士協定」については、「そもそも初めから存在しないのでは?」という意見も存在します。

実はマクドナルド兄弟は、この紳士協定について一度も言及したことがありません。
それどころか、マクドナルド社の親善大使的な活動に協力すらしています(!)

マクドナルド兄弟の甥だけが、「実はこんな紳士協定があったんだけど守られなかったんだ!」と言っているのです。参考リンク

甥っ子がなにかの勘違いをして権利を主張している、という可能性もあります。(あるいは利益目的でゴネているとか)

映画のようにマクドナルド兄弟が諦めた、という可能性もありそうです。なにしろ契約書という証拠を残さない紳士協定ですから、履行されなくてもレイ・クロックに訴訟を起こすのは不可能です。

あるいは兄弟が270万ドルだけで十分満足したとか?
当時の270万ドルは現在の価値に直すと2200万ドル、24億円相当の価値があります。
当時お兄さんは既に60歳、弟さんも53歳。これ以上お金があっても…という気持ちになるのも十分理解できます。
(むしろ、あの年齢であそこまでバイタリティを発揮するレイ・クロックのほうがすごいですね)

なにしろ契約書外の出来事ですし、レイも、マクドナルド兄弟も故人となってしまいました。真相は闇の中です。

3.実は映画ではマクドナルド社のロゴを使っていない

映画の中に商品を登場させ宣伝効果を狙う広告手法を「プロダクトプレイスメント」と呼びます。

たとえば、007のジェームス・ボンドが身につけるオメガの時計なんかもそうですし、登場人物がコカコーラ飲んでたり、富豪がレクサスに乗るシーンもそうですね。

これらの演出には、企業から相応の広告料が支払われており、映画の規模にもよりますが、高い物では数億~数十億円単位と言われています。

本来、企業は数億~数十億のお金を出してでも映画の中に商品を登場させたいものなのです。

ところがこの映画に限って、あのマクドナルドのロゴが一度も登場していないことに気づきましたか?

「いやいや、めっちゃパッケージ写真で使ってるやん!w」と思われるかもしれませんが、よくご覧ください。

よく見ると、ちょうど中央に主人公が立ってるため「Mではありません。旧マクドナルドの黄金アーチ×2です☆」というギリギリな言い訳が可能なんです!(笑)

実はマクドナルド社はこの映画について、「いっさい関与しない」というスタンスを貫いています。

まあ、たしかに創業者(?)レイ・クロックの醜聞とも言える映画ですから、現在のマクドナルド社としてはイメージダウンが怖いところですよね。

積極的に応援したくないのはもちろん、当社の商品やロゴも勝手に使うなよ!!という気持ちなのでしょう。

なるほど、よくよくみてみれば兄弟時代の「旧マクドナルド」については、

商品も、店内も、外観もばっちり映っていましたが…

ところが、レイ・クロックに譲渡した後のマクドナルドについては、エンドロールなどでいくらでも映す機会があったにも関わらず、

お馴染みの商品がひとつも映っていませんでしたし

一目でマクドナルドと分かる、あの外観も一度も映りませんでしたね。

まぁ、新マクドナルド側も映画に協力する義理は無いですしね(笑)

厳密に言えば、新マクドナルド社のロゴが登場するシーンもいくつかあります。

兄弟がレイからもらった挑発的な手紙と(手紙の上部に小さくロゴがあります)、その直後の新会社が映るシーン、

270万ドルの小切手のシーン(これも小切手に小さくロゴが!)、

あとは、兄弟の店舗に目の前に建てられた、新店舗の看板です。

これらは問題にならないのか?とも思えますが

①小切手や手紙は商品ではないし、文面自体も著作権が生じるようなものではなかった
②看板はそもそも公に情報を公開するためのもので、引用に問題はない

という逃げ道があるから映せたのでしょう。法律には詳しくないので、想像ですが。

まあ、マクドナルドの商品や店内を許可なく撮影して批判しまくった映画もありますし、それに比べればまだ紳士的と言えるかもしれません。

※例の映画、いつのまにか続編がでてました。

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