『運び屋』に監督の半生が反映されすぎな件/8人の子供と数々の伝説

この映画を観て、ふと「最近のクリント・イーストウッド監督作品とちょっと違うな」と思いました。

クリント・イーストウッド監督は近年実話ベースの映画を量産しています。
実際に、映画『15時17分、パリ行き』のDVD特典ではこんなコメントも残しています。

ヒーロー映画は多い。
でも実際の世界で偉業を成し遂げた人々の映画はあまり多くない。
私は後者の映画を撮るのが好きだ。

クリント・イーストウッド監督

 

映画「運び屋」もそんな実話ベースの映画の一つ言えますが、近年の映画が“実際の世界で偉業を成し遂げた人々”を題材にしていたのと比べ、ニュアンスが異なります。

なにしろ主人公は犯罪者であり、決して賞賛されるような人物ではありません。
そういう意味で「ちょっと違う」と思ったのです。

 

彼はどうして、この映画を題材に選んだのでしょう?

そのヒントになりそうなのが、主人公の娘アイリス役を務めたアリソン・イーストウッドです。

そう、彼女はクリント・イーストウッド監督の実の娘なのです。

 

この事実を知ったとき、「もしかしたらクリント・イーストウッド監督は、自分の半生をこの映画に投影していたのかもしれない」というアイデアが閃きました

そして、いくつかの証拠から、それを確信するに至ったのです。

 

クリント・イーストウッドはどんな父親だったのか?

銀幕の大スターから映画監督に華麗に転身し、何本もの名作を監督した映画界のレジェンド、クリント・イーストウッド。

しかしその私生活を覗いてみると、決して「いい父親」だったとは思えません

 

そもそも映画スターや監督として第一線を走り続け、数々の賞を受賞された方ですから、家庭よりも仕事を優先していても不思議ではありません。

皆に賞賛される一瞬のために、手間と時間を費やして、家族を犠牲にする…まるでこの映画の主人公そのものです。

皆に注目されたいだけ

仲間内でトロフィーを渡しあう

デイリリーは特別なんだ、手間と時間をかけて一日だけ咲き誇る

俺は家では役立たずだから

映画の中のセリフの一つ一つが、まるで彼自身が絞り出しているかのようです。

 

決して人格者ではなかった

それだけではありません。

最近の老熟した映画監督の姿ばかりみていると、落ち着いた人格者のように思えてきますが、若い頃はけっこうヤンチャな方でした

 

駆け出しで苦しかった頃、初めてテレビドラマの準主役に抜擢されたときには、高額な給料を握りしめてすぐさま高級車を買いに行こうとしました。

そのときは、浪費を懸念したマネージャーに預金を厳しく管理されるようになったそうです(笑)

 

友人とバーにいたときには船乗りのグループと喧嘩になり、二人を病院送りにしたこともありました。

なんとなく、彼がどんなタイプの人間なのか判ってきましたね(^^;

 

ドラマが大ヒットし、人気俳優になると彼はますます増長してしまいます。

共演者から「毎朝30分か一時間遅刻してくる」「既婚女性とトレーラーの中に引きこもり、疲れた様子で午後の撮影に参加していた」などの声が聞こえてくるようになりました。

 

そして彼は、とにかくモテたのです…。

 

伝説のプレイボーイ

クリント・イーストウッドは多くの家庭トラブルを抱えた伝説のプレイボーイでもありました。

 

なんと、今まで二回しか結婚していないにも関わらず、6人の女性の間に8人の子供を作っています。

もう、計算が合わないとか言うレベルじゃありません(笑)

 

同棲していた交際相手の暴露本を信じるなら、自分に二度も妊娠中絶をさせておきながら、外で二人も子供をつくっていたりしたそうです。ひどい。

ちなみにこの時点で前の奥さんとは離婚が成立しておらず、その娘がアリソン・イーストウッドさんです。

もう、滅茶苦茶ですね…。
こんな状況で「良い父親だった」「良い夫だった」とは口が裂けても言えないでしょう。

 

そういえば、映画の中でも露出度が高い美女に誘惑されるシーンがやたらと多かったですよね…。
しかもよく考えたら、あのシーンって物語に特にいらないシーンだったし…

もしかして「何度も女性に溺れた過去」をああいう形で表現したのかもしれません。

 

映画の中での奥さんのセリフを覚えていますか?

あなたは私の人生で最愛のひと。そして最大の苦痛の元…。

もしかしてコレ、彼が実際に言われたセリフなんじゃないでしょうか…?(苦笑)
そんな気までしてきます。

 

元奥さんは今、一体どんな気持ちなのでしょう?

クリント・イーストウッドを恨んでいるでしょうか?

 

奥さんや子ども達に伝えたかった?

それが実は、最初の妻マギーさんはこの映画『運び屋』のプレミア(ゲストを招く初回上映会)に姿を見せたのです…!

右が最初の奥さんマギー。(アリソンのお母さん)
左はなんと、クリント・イーストウッドの現在のガールフレンド(!)

 

クリント・イーストウッド監督はたくさんの映画を作ってきましたが、あえてこの作品にマギーさんを招待した意味とはなんでしょう?(私が調べた限りでは、他の作品ではあまり招待していないようです。)

もちろん「娘のアリソンの出演作だから」という理由もあるでしょう。

でも、それだけではなく、なにかメッセージを込めているように思えませんか?

 

そして同時に、彼は8人の子供たち全員もこのプレミアに招待しているのです。

モーガン(右から2番目)のインスタグラムより。
「なんて珍しい!イーストウッドの子供たち8人全員が一つの部屋に!」

なんていうか、スゴイ集合写真ですよね…(苦笑)
意外にも和気藹々としています。

しかしモーガンさんのコメントを逆に考えると、「今までのどんな監督作品でも、子供たち8人を同時に招待したことはなかった」ということです。

 

なぜ、この作品だけ子供たち全てを招待したのでしょう。

この作品の中に、子供たちに伝えたかったメッセージがあるに違いありません。

「私は愚かだった すまなかった」

「大切なのは時間だ 家族との時間を大切にしろ」

「自分のようになるな」

 

もう一人

さらに、彼がメッセージを伝えたかっただろうもう一人の相手。

それが映画で捜査官役を演じたブラッドリー・クーパーです。

 

彼とクリント・イーストウッドは共通点が多いです。

どちらも甘いマスクと演技力を兼ね備えた俳優で、ブラッドリー・クーパーは2011年にはアメリカ『ピープル』誌の「もっともセクシーな男性」で一位に選ばれています。

俳優業だけでなく、映画プロデューサー(「世界に一つのプレイブック」「アメリカンハッスル」等)や映画監督(「アリー/スター誕生」)としても成功を収めているのも共通しています。

また、ブラッドリー・クーパーはクリント・イーストウッド監督の映画『アメリカン・スナイパー』では共に製作を担い、主演も務めています。

 

おまけに、彼もまた希代のプレイボーイなんです…。

女優のジェニファー・エスポジートと結婚するもすぐに破局。

それ以外にもジェニファー・アニストン、キャメロン・ディアス、レネー・セルヴィガー、ゾーイ・サルダナなど、何人もの女優との間で浮き名を流しています。

さらに2017年には別の交際相手との間に子供も出来ますが、結婚することなく破局してしまいます。子供はどうするんでしょう。

良くも悪くも、クリント・イーストウッドそのものですね…

 

華やかなハリウッドスター&映画監督の道を歩きながらも、私生活で問題を抱えている…

彼を「主人公からメッセージを受け取る」役に抜擢したのは、ただの偶然でしょうか?

まるで彼に、なにかを言いたかったように思えませんか?。

 

まとめ

この映画には「ただの偶然」で片づけられないことが多すぎます。

 

実の娘を起用したこと

元妻をプレミアに招待したこと

子供たち全員も招待したこと

自分そのものの人生を辿ろうとしているブラッドリー・クーパーを刑事役に配したこと

 

ここまで来たら、自信を持って断言したいと思います。

『運び屋』はクリント・イーストウッド監督の半生と、心からの懺悔が投影された映画なのだと。

そして、8人の子供たち、次代を担う映画監督、そして誰よりも別れた妻に、届けたかった映画なのだと。

スポンサーリンク
レクタングル大
レクタングル大

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする



スポンサーリンク
レクタングル大