細かい伏線色々
新聞
小屋の中でマッチを貸すシーン。
新聞を焚きつけに使っているが、新聞の日付(2011)がクローズアップされるも、サマンサには見えていない。
車
トムがサマンサ夫婦の車(当然、1950年代の車)を見に行った帰り道
「いい車だね」
「そう?」
「クラシックだ」
「スピードのでないポンコツよ」
当然トムはクラシックカーの意味で使っているが、サマンサは気づいていない。(※classicには「一流品の」という意味もあるので、サマンサの返しも不自然ではない)
ライター
サマンサが、ジョディが使っているライターをみて。
「いいライターね」
「どこが? どこのガソリンスタンドにもあるやつよ」
使い捨てライターが初めて売り出されたのは1961年。1962年から来たサマンサには目新しいデザインに映ったのだろう。(なお、サマンサが煙草に火をつけたのはマッチ)
ベスト
「古くさい上着は置いていけ、サマンサが着る」
「言っておくけど新品よ」
アメリカでは1970年代後半~、日本ではちょっと遅れて1980年代後半よりブームとなったダウンベスト。1985年を舞台とした『バックトゥザフューチャー』でマーティーが着てたのが印象的。21世紀だと、確かに古くさい。うちの母とか愛用してる。
パックマンみたい
ジョディ「パックマンみたい」
トム「パックマン?」
パックマンは1980年に発売され、80年代に大ブームを巻き起こした。(なお、開発は日本のナムコだ!)
しかし2011年の若者にとっては、名前は知っていても、ゲーム内容はよく知らないことがほとんど。
映画「脱出」
ジョディの口から出た映画のタイトル。
サマンサが知らないのも当然で、1972年公開の「Deliverance」のこと。
ジョン・ブアマン監督、命がけの脱出を描く、映画史に残るサスペンスの怪作。
金庫の謎
この映画でやはり気になるのは、あの金庫の中身ですよね。
なんとなく、時空を越える鍵を握ってるんだろうとは思うのですが。
ちょっと考察してみました。
1.ジョディへのセリフ
まず、冒頭の強盗シーンで、ジョディに向かって店主が言ったセリフを書き出してみました。
「中身はあんたのお気に召さんよ」
「面白い人生を送ってるな」
「どん詰まりなのに気にもしていない」
物語の背景を知った上で改めてこれらのセリフを読むと、店主がまるでジョディの悲惨な人生を見透かしているかのような発言をしていると気づかされます。
この店主自身が、神様とか、魔法使いとか、仙人のような不思議な存在なのでしょうか。
中身はお気に召さないと注意喚起をしつつも、「開けない方が良い」とは言っていないのがポイントです。
2.別の女へのセリフ
歴史が改変され、ジョディが小綺麗な奥さんになったシーンでの、別の強盗カップルへの店主のセリフがこちら
「そんな人生でいいのか?」
「努力もせず店で小金を奪う毎日か」女「金庫を開けなさい」
「いいが…」
「中身はお気にめさんよ」
うがった味方かも知れませんが、ジョディのときと若干ニュアンスが違うように思えます。
ジョディの時は「面白い人生を送っているな」と境遇の悲惨さにスポットを当てていますが、こっちは「そんな人生で良いのか?」「努力もせず…」と若干お説教口調です。
たしかにジョディは母を出産で、父を戦争でなくし、祖父からは虐待され、「満足な教育を受けていない」不幸な身の上でしたもんね。
もしかしたら別の女のほうは、境遇はそこまで悪くなくて、彼女の心がけが悪かったのかも…と思わされます
また、こちらでも「お気に召さない」とは言いつつ、金庫を開けること自体はOKしていますね。
なお、終盤の強盗カップルの彼氏ですが、ジョディが強盗をしたときの彼氏と同一人物なのが面白いですね。
歴史が改変されようと、彼氏はクズ男のままなのです。
おそらく強盗を持ちかけたのはこのクズ彼氏のほうで、付きあってる女性が変わっただけなのでしょう。こいつこそ更正すべきなのでしょうが、もしかしたら神様でも更正しようがない、根っからの悪人なのかもしれませんね(苦笑)
3.総合して考えると…
店主の発言をまとめると…
- 二人の女性に対して「更正すべき」と考えている
- 更正のきっかけになるであろう金庫を、積極的に勧めてはいない
- さらに「お気に召さないだろう」とアドバイス
つまりあの「金庫」は、更正のきっかけになるとしても、非常に過酷だし(=お気に召さない)、成功するとは限らない(=積極的には勧められない)ものなんだと思われます。
おそらくあの金庫は、『時空を歪めて送り込むことが出来るアイテム。けれどもそれ以降は、本人達のがんばり次第』…といった所なんじゃないでしょうか。
たしかに、映画では紙一重の差で助かりましたが、一歩遅ければジョディが消滅した上でハンスも爆撃を受けて死んでいましたねー…。人生をやり直すチャンスを与えるけれど、あくまでチャンスだけで、悲劇で終わる可能性もあるのでしょう。
ちなみに、ジョディへの「どん詰まりなのに気にもしていない」と言うセリフは、英語だと以下のようになります(ネットで見つけました)
you don’t even care that you’re going nowhere.
「どこへもいけない(going nowhere)のに、気にしてさえいない」
原題の“Enter nowhere”を意識した、面白いダブルミーニングですよね!
その他の豆知識
低予算映画
この映画の予算は50万ドル、約6000万円。かなり低予算な映画です。
でも実はこれって、一般的な邦画の予算とそう変わらないんですよね(笑)
もちろん一本数十億円というハリウッド映画の相場を考えると格安ではあるのですが…。
なのでB級映画、という表現はなんだかしっくりこない気もします。
海外での評価
IMDbのユーザーレビューでは6.5。
Rotten tomatoes では4.9。
どちらかというと低めの評価をされています。
前半はホラー・サスペンス調だったのが、ラスト30分でバックトゥーザフューチャーさながらのアクション・ドラマ寄りになっちゃったのが評価が別れた点でしょうか。日本人は好きそうなラストですが…。
スコット=イーストウッド
トム役のスコット・イーストウッドは、あのクリント・イーストウッドの実の息子でした。たしかに顔も似ています。
とはいっても、母親はスチュワーデスさんで、両親は結婚しなかったため、婚外子扱いだとか。
なお、クリント・イーストウッドは合計5人の女性との間に7人の子供を設けています。意外と破天荒です。
スコット=イーストウッドは『パシフィック・リム: アップライジング』にもメインキャラで出演したり、テイラー・スウィフトのミュージックビデオに出演したりしています。