チャールズ・マンソンの素顔。囚人仲間がみた「本当の性格」とは。

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映画「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」で登場する狂気のカルト集団の教祖・チャールズ=マンソンは、実在の犯罪者です。
ヒッピーの集団の「ファミリー」を形成し、殺人を指示することで、7人もの人間を虐殺しました。

彼とその取り巻き「マンソンファミリー」は一体何者で、どうやって形成されたのでしょうか。
そもそも彼らはなぜ、そのような行為に及んだのでしょうか。

マンソンファミリーの成り立ち

素行の悪かった彼は青年期のほとんどを少年院や刑務所で過ごしました。
ひさしぶりに刑務所を出所した彼を待っていたのは、1960年代にアメリカを席巻していたヒッピーカルチャーでした。

体制を批判し、LSD漬けで陶酔状態、フリーセックス。当時はそれが“かっこいい”時代だったのです。生粋のアウトローである彼はその波をしっかり捕まえました。
その上彼は相手の歓心をくすぐるのが抜群にうまく、当時の流行りにぴったりの甘いマスクとヒッピーらしい風貌も兼ね備えていたのです。
彼もそれを自覚していたのか、毎朝ヘアスタイルの維持に長い時間をかけていたと言います。(彼について「意図的にヒッピーらしいスタイルを取り入れていただけ」という批判もありますが、モテたくて流行に乗った人間は当時は他にもいたでしょう)

いわゆる「教祖」のイメージとは違い、かなりのイケメン。

また、彼に夢中になった娘のほとんどは中流家庭からのドロップアウト組だったと言います。
周囲に認められず、満たされない自己肯定感を抱えてきた彼女達に、彼はたっぷりの愛とセックスとLSDを与え、次々と虜にしていったのです。

そして彼らは「自然回帰」のヒッピーカルチャーに影響され、郊外の砂漠や洞窟で35人ほどのコミュニティをつくり、LSDと性に溢れた自由放漫な共同生活を始めました。

とはいっても自給自足の生活にはほど遠く、近くの食料品店から廃棄食品をもらってきたり、自動車を盗んでは売り払ったりして生活を維持していたようですが。
またファミリーの女の子を“貸し出す”ことを見返りに、近くの農場主の土地に住まわせてもらったりもしたようです。

ジゴロのマンソンと、その取り巻き。
「マンソンファミリー」はそのように成立しました。

なぜ事件を起こしたのか

彼のカリスマなのかLSDのせいなのか、マンソンは次第にファミリーの中で教祖のような絶対的な存在になっていきました。

ついにはLSDでラリったチャールズ=マンソンが「ビードルズの楽曲“ヘルタースケルター”は予言している!人種間戦争だ!終末戦争だ!」と言い出すと、皆もそれを信じ込みます。

マンソンが「ハルマゲドンを意味している!」と解釈したビートルズの楽曲「Helter Skelter」

さらに彼の妄想は「だが黒人にはこの国の統治ができない。そこで洞窟で独立生活を送り終末戦争を回避した俺たちが、新たな支配者になればいい!」とトンデモ理論に発展していき、ファミリーもそれに熱狂してしまいます。

そしてついに「早く戦争が起きるように黒人のフリをして白人を虐殺しよう!」と、次々と残虐な殺人事件を重ね、罪なき7人もの市民を惨殺してしまったのです。

全く持って理解できない、狂気の理論です…。

犠牲者の中にはロマンポランスキー監督の妻でハリウッド女優のシャロン・テートもいました。当時彼女は妊娠8ヶ月でした。(この辺りが映画に描かれる部分です)

この事件は全米を揺るがす大きなニュースになり、そしてまたアメリカヒッピー文化の“汚点”として記憶されることとなりました。

彼は頭のイカレた殺人狂として名を馳せ、“マンソン”の名前は悪と狂気の象徴となります。
ハードロック、デスメタルで有名なアーティスト「マリリン・マンソン」も彼から名前をとったそうです。


マリリンマンソン。

盲信的な信者。
世間から隔離されたコミュニティー。
自身は手を下していない教祖。
ハルマゲドン。

…まるで、オウム真理教のサリン事件ですね。

チャールズ・マンソンの素顔。本当の性格とは?

「刑務所の王」という本があります。

アメリカの刑務所に長年収監されている間、獄中ギャング組織を支配していた男ジョージ=ハープ。彼の供述に基づくノンフィクションなのですが、その中逮捕されたチャールズ=マンソンが囚人として登場する一節があります。

長い物語の中でのほんの数ページ、刑務所の中の日常のエピソード紹介のような、わずかな登場ではあるのですが…。

彼が刑務所に収監されている間、マンソン・ファミリーの女性達と面会をしたり、常時LSDを常用してたびたび陶酔状態になり「数時間空中の一点を睨んで薄ら笑いをしていた」様子が描かれています。

LSDはその前年にようやく違法となりましたが、アメリカの刑務所内では囚人間での“裏商売”が横行しており、刑務所の中でもLSDの入手が可能でした

それよりも、この本には、非常に興味深い以下のようなエピソードがあります。

「ちきしょう!こんなことになるはずじゃなかった」
しらふに戻るとチャーリー(注:チャールズ=マンソンのこと)はジョージに向かって本音を吐いた。
「あの娘達が、おれのじょうだんをほんきにしてやっちまったんだよ。だけど、後から冗談だったなんて言えないじゃないか」
「新聞では、すべておまえの指示に基づいた殺人と書いてあるが、違うのか?」
「ジョージ、俺はそんな人間じゃねぇよ。だけど陶酔している時、何を言ったかは覚えていないさ。豚は殺せ!とか言ったんだろう。それを彼女達は俺の指示だと思って実行してしまったんだ」
七人の命を奪ったマンソン・ファミリーのリーダーであるチャールズ・マンソンが世間で考えられている非常で残忍な殺人鬼でなく、弱気で見栄っ張りなLSD常習者であったとはジョージには意外だった。

引用:「刑務所の王」より

主人公ジョージはチャーリーことチャールズ=マンソンに対し、本来は臆病で神経質な性格であるとみていました。チャーリーは幼少時より刑務所を転々としている間、常に他の受刑者からいじめられてきており、強い人間になることに憧れているのだと。

LSDを服用したとたん、生来臆病な性格の自分が怖いもの知らずになり、現実世界で憧れていた強い無慈悲な人間になれる。そのことを発見してから彼は自らが嫌悪する本性を隠すためLSDを常習しているのだ

引用:「刑務所の王」より

彼は決して自分でどうこうするつもりなんてなかった、強い自分に憧れていただけだった。彼が幻想の世界に逃げ込んでいたときに口走った放言を、彼がはべらせていたヒッピー達が勝手に実現してしまったのではないか…と睨んでいるのです。

彼は本当に悪人だったのか

これを読むと、チャールズ=マンソンは狂った殺人鬼というより、気の毒でバカなモテ男という印象を受けます。

たしかに事件の際、チャールズ=マンソン本人は殺害どころか、現場にいたという証拠すら一つもあがっていません。ネット上では彼自身も手を下したとする説もありますが、あれだけ衝動的に事件を起こしておきながら、結局彼の罪状について確定できたのは「共謀罪」だけでした。

閉鎖的なコミュニティを形成したことについても、大きく法を犯しているわけではありません。(もっとも、自動車を盗んで金にしていたのは犯罪ですが)

ですが、仮にそうだったとしても、彼に罪がないと言えるでしょうか?
洗脳まがいの方法で自分の発言を盲信する集団を作り上げておき、服用すれば無責任な発言をしてしまうと理解した上でLSDを飲んだのです。
例えるなら、大酒を飲み車を運転して自動車事故を起こしておいて、「事故当時は酒で意識が朦朧としていたため責任はない」と言い逃れるようなもの。
彼はLSDの陶酔に自らの責任を擦り付けているにすぎません。

最後に、もう一つだけ「刑務所の王」の一説を引用したいと思います。

今、チャールズ・マンソンは、現実の世界では凶暴な殺人鬼として裁かれようとしている。チャーリーの顔には後悔の色はない。もはや、米国犯罪史上有数の殺人鬼として世間から怖れられる存在になったことを歓迎しているようだ。

終身刑となった彼は、83歳で亡くなるまで生涯刑務所で服役しました。
生前、時折インタビューなどを受けては「殺人は薬局に立ち寄るようなもの」など、人を人とも思わぬ狂気じみた言動を披露していました。

凶悪なカリスマとして皆に怖れられることが、そんなに嬉しいのでしょうか。
本当は臆病でちっぽけな人間なのに。
何人もの人間の命が失われているのに。

もしかしたら、彼は狂った殺人鬼ではなかったかもしれません。
最初から殺すつもりすら無かったのかもしれません。

でもきっと、別のどこかが、狂っていたんでしょう。

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