新事実!『フォックスキャッチャー』ジョン・デュポン氏は両寧丸を摘出していた!事件への影響とは?

foxcatcher
映画『フォックスキャッチャー』では、レスリングチームを支援していた大富豪ジョン・デュポンが殺人を起こしてしまった衝撃の実話が描かれていました。どこかおかしい不気味さを感じさせるスティーブ・カレルの熱演には圧倒されたものです。

映画では彼の殺害衝動につながる要因として、

  • 母親への承認欲求
  • 何不自由ない生活によるストレス耐性の低さ
  • お金をばらまいて得られた空虚な満足感

などが描かれていました。

しかし映画が公開された翌年の2015年10月、新たな事実が発覚しました。映画で主人公として描かれていたマ ーク・シュルツが「ジョン・デュポンは事故により両方の望丸を失っていた」との発言をしたのです。

発言の内容

2015年10月、マーク・シュルツ氏はポッドキャストにゲスト出演しました。
ポッドキャストとはいわゆるインターネットラジオの一種で、Andrew Gurevich さんの番組『On the Block Radio』に出演した際、以下の発言をしたそうです。

ジョン・デュポンは30歳くらいの時、乗馬中の事故で柵の上に投げ落とされ、両方の睾丸を損傷した。その後、細菌感染が起こってしまったので、両方とも摘出してしまった。 それ以降、彼はその影響で両性的な性格になったんだ。

出典 Wikipedia (en):John du pontより

“両性的な性格”がなにを示しているかまではわかりませんでした。しかし、両方の撃丸を摘出していることは、この事件を考察するとき非常に重要な情報です。

睾丸摘出の影響とは

言うまでも無く、睾丸とは生殖能力・性交渉能力に直結するだけでなく、男性にとってはアイデンティティやプライドにも関わるナイーブな器官です。それを喪失したことで、デュポン氏の精神に悪影響があった可能性ももちろん考えられます。

しかしそれだけでなく、睾丸の喪失は人体に大きな変化をもたらします。それは男性ホルモンの生産能力を失うことによる、心身の不調です。

男性ホルモン(アンドロゲン)は睾丸内の精巣にあるライディッヒ細胞で産生されるホルモン群(テストステロン等)を指します。
主な働きは以下のようなものがあります。(中学生の男子の二次性徴を考えるとわかりやすいですね。)

  • 男性器の形成と発達
  • 変声(いわゆる声変わり)
  • 体毛の増加
  • 筋肉増強
  • 性欲の亢進

ところが、これらの機能だけでなく、男性ホルモンの急激な低下は心身に大きな悪影響があることがわかってい ます。いわゆる更年期障害と言われるものです。

更年期障害は女性の病気と思われがちですが、実は男性にもあり、LOH症候群と呼ばれています。
男性ホルモンの分泌量は30歳ごろから少しずつ減少し始め、年1~2%の割合で減少します。中高年になり、男性ホルモンの分泌が低下することにより、様々な心身の不調が現れるのです。

ただ女性の更年期ほど急激に変化するわけでもなく、閉経というわかりやすい目安もないためそれとわかりづらく、その影響も個人差が大きいです。また、認知度も低いため、気づいていない人も多いと言われています。

さて、男性の更年期障害では以下のような症状があると言われています。

精神症状:集中力の低下、無気力、不安感、頭のもやもや感、イライラ感、うつ、疲労感、不眠、記憶力の低下

身体症状:不眠、精力低下、多汗、勃起障害・性機能低下、筋力低下、筋肉痛、ほてり、発汗、頭痛、めまい、 耳鳴、頻尿

特に注目していただきたいのは精神症状ですね。不安、イライラ、そして鬱。

実際、LOH症候群の精神症状は、うつ病と類似するものが多く、日本の調査では患者の47.8%が大うつ病と診断されています。40-50歳代に限ると じつに60%もの高率を示しているそうです。

比較的緩やかに男性ホルモンが減少していくLOH症候群でさえ、精神にこれだけの影響がでるのです。
ましてや、ある日急激に男性ホルモンがゼロになってしまったデュポン氏の場合、どれほどの変調があったことでしょう?

いつからかはわかりませんが、事件の前後、彼は妄想型の精神分裂症を患っていたと言われています。
自分では理由のわからない異常なイライラや不安、鬱症状を抱えたまま毎日を過ごし、徐々に精神に破綻をきたしていった…そんな可能性も考えられます。

もちろん、これらのハンディを考慮しても、殺人を犯した彼の罪が軽くなるわけではありません。両睾丸を失いながらも立派に社会生活を営んでいる人は大勢います。
しかし、彼がなぜあのような心理状態となったのか、その謎を解く鍵のひとつではないでしょうか?

マーク・シュルツ氏の発言の真偽は?

一つ注意しておきたいのは、この記事は英語版ウィキペディアの記事に準拠しているということです。

マーク・シュルツ氏の記憶違い、あるいは意図的な嘘の可能性もゼロではありませんし、wikipediaに記載される段階でなんらかの誤りがあったかもしれません。
死人に口なし。彼が本当に睾丸を喪失していたのかは、もはや誰にもわかりません。

…ただ、マーク・シュルツ氏が意図的なこんな嘘をつく必要はあるでしょうか?

既にジョン・デュポン氏の名誉は地に落ちており、今更彼を貶めることにたいして意味があるとは思えません。

むしろ、兄を殺された恨みがあったにしろ、2010年にデュポン氏が死去するまでこのプライベートな情報を公開しなかったマーク氏の配慮のほうが理解しやすいです。武士の情けってやつでしょう。

また「睾丸喪失により精神不安定になっていたとしたら、なぜそれを法廷で武器にしなかったのか」という疑問もありますが、なにしろ出来れば誰にも知られたくないデリケートな情報ですし、当時本人に「睾丸喪失で精神 不安定になる」という医学的な知識がなかった可能性もあります。

個人的には、この情報の信頼性は非常に高いと考えています。

まとめ

彼の凶行には、睾丸喪失に伴う男性ホルモンの激減、その結果生じた精神不安定が影響を与えた可能性が考えら れました。

しかしこの新事実をもってしても、彼が突然殺人を犯した心理まではよくわかりません。

いくら正常な心理状態でなかったにしても、ここまで狂ってしまうものなのか?
異常があっても、大富豪ゆえに隠ぺいでき、早期に治療されず放置されたからでしょうか?
あるいは、防ぐ手段はないのか?
そしてこれからも、こんな事件は起こりうるのか?

…今となっては、全ては闇の中です。

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