「太陽の蓋」のネタバレあらすじと、民主党との関係を調べてみた

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始めに断っておきますが、僕は反自民党でも、反民主党でも、脱原発主義でもありません。

なぜわざわざこんな前置きから始めたかというと、この映画が東日本大震災の原発事故を克明に描いた映画だからです。悲しいかな、日本人がこの事件について語る時は、必ず政党批判がセットになってしまいます。
ただ、僕はこの映画の紹介をもって、特定の政党を批判したいわけではないとご理解ください。

この映画のあらすじと解説

ある日、東日本大震災が日本を襲った。

福島第一原子力発電所が被災したことにより、福島から電力を供給してもらっていた東京は電力が不足。通信網も大混乱に陥っていた。
それにも関わらず、緊急対策本部は東京に作るしかない。官僚は苛立たしげに「そういう仕組みになっているんだよ!」と吐き捨てる。

緊急対策本部は、東京に作る。法的にそう決まっていましたし、他の都市には国レベルの危機に対応できる機能が備わっていません。
東京一局集中の余りに危うい現実が露わになった瞬間でした。

官邸の混乱

対策本部では政府首脳たちが緊張した表情で集まっていた。災害情報の把握の中で、原子力保安委員の委員長に質問が振られる。
「福島第一(原子力発電所)はどうですか」
「特に問題はない、と聞いています」

これは当時の受け答えそのままだそうです。
実はこの時すでに、福島第一は致命的な問題に直面していました。原子力発電所の冷却装置には非常用発電機がふたつあったのですが、その二つともが津波の被害を受けたことで、機能を喪失していたのです。
原子力発電所が冷却機能を失うこと、それは核燃料が制御不能になり、メルトダウンを起こすことを意味していました。

これだけの危機に直面しながら、「特に問題はない」と回答してしまったのです。

ついに、対策本部に情報が伝えられた。
「福島第一!冷却機作動しません!全冷却機能喪失ッ!!」

ようやく官邸に情報が伝えられました。

しかし当然、専門家ではない人間には『全冷却機能喪失』だけでは、何を意味するのか理解できません。そこで原子力保安院の委員長に皆の注目が集まります。原子力発電所の責任者として、説明が求められたのです。

これに対して、日本の原子力行政のTOPは実際にこう回答したそうです。

保安委員長「…わかりません」

唖然とする一同。真っ先に怒りを爆発させたのは首相だった。
「わからないって…、原子力保安院の委員長に、原発のことを聞いているんだぞ!?」
それに対して、原子力保安委員の委員長は憮然とした表情で答えた。
「私は、東大の経済出身です!」

あまりにもお粗末な回答ですね。これが日本の原子力行政の現実でした。

実は「原子力保安院」は経済産業省内の組織なんです。当然職員は経済産業省所属の官僚です。彼らは経済政策には精通していたかもしれませんが、原子力発電所の専門家ではありませんでした。

苛立った緊急対策本部は「現地に直接連絡を取りたい」と、同席していた東京電力のフェロー(=副社長)に確認する。
東電フェローは戸惑いながら、隣の部下に「非常回線使えないか」と確認する。

再び「まだ現地と連絡を取っていなかったのか!」と皆の怒りが爆発するが、東電フェローは「本店に、指示は受けてますから…」と答える。

首相は、秘書官に現地へ向かうヘリの手配を命じた。

この非常事態に、まだ現地と連絡が取れていない!官邸の苛立ちが伝わってくるようです。
この時、当然ながら福島第一は事故対応で手いっぱいでした。官邸に逐一報告を入れるような余裕はどこにもなかったのです。

また、ここで首相がヘリで現地に向かう決断をします。首相は緊急対策本部の本部長でもあり、危険がある現場を自ら確認するなんて、非常対応として異例のことです。
そのため、この決断は後にマスコミから大きな批判にさらされることとなります。

一方、メルトダウンの危機も刻一刻と迫ってきていましたが、幸い冷却機能そのものは生きており、電源さえ確保出来れば稼働が可能な状態です。

そこで自衛隊の保有する電源車を向かわせますが、震災であらゆる道路が寸断されています。
自衛隊のヘリで電源車を運ぼうとしましたが、これも電源車が重すぎて運べません。

「一台でいい!!なんとかするんだ!!」

焦燥に包まれた対策室に「電源車一台到着しました!!」と一報が入る。
歓声が上がり、これで一安心と皆が表情を綻ばす。

しかし、さらに信じられない一報が入る。
「電源車、プラグの形があわなくて、役に立たないそうです…」

プラグの形とか…事前に準備してしかるべきでしょう…。非常用ラジオだって、事前に乾電池の種類はチェックしておくのに。そうでなくても、事故直後に東電から具体的な要望がでてもいいはずです。

なんてお粗末な…。おそらく国も東電も、外部電源が必要になる「自家発電機二機が同時に機能喪失」という事態を一切想定していなかったのでしょう。

一方、核燃料の冷却がうまくいかず、原子炉内の水蒸気の圧力を下げることが急務になっていました。圧力が高まれば冷却水を入れることも出来ず、最悪水蒸気圧で原子炉が破壊されることもあるのです

「ベントすればいいんです」
原子力安全委員、斑目委員長は説明した。ベントとは、非常用に設置した弁から水蒸気を外に逃がすこと。
しかしその言葉に「ベントなんて…」と困惑する東電フェロー。

ベントをするとどれくらい放射能が外に漏れてしまうのか、と質問がでた。
「わかりません」と答える委員長。
「だってベントなんて、世界中どこもやったことがないんですから」

ついに日本は、世界初の非常措置すら試す羽目にまでなっていたのです。東電のフェローが苦々しい表情をするのもわからないでもありません。
その後、紆余曲折ありながらも(ここでも色々あったのですが、詳しくは映画本編にて)、なんとかベントに成功。原子力安全委員からも「爆発はしません。ベントしたんですから」とのお墨付きをもらいました。

なお、原子力安全委員とは先ほど説明した原子力保安院とは別の組織。原発業者や官僚、政治家とは無関係の有識者で構成された第三者機関です。
原発建設の承認・審査や、原発事故の際の助言機関の役割を果たしています。

突然、テレビから衝撃的なが流れた。
原子力発電所で、建物の高さを超えるような大きな爆発が起きてしまったのだ。

呆然と画面を見つめる災害対策本部の面々。
テレビからは「一時間ほど前、福島第一原子力発電所でなんらかの爆発が起こりました。詳細は不明です」とのアナウンスが流れる。
原子力安全委員の委員長は「あちゃ~…」と言い、頭を抱えていた。

この時の映像は当時のものをそのまま利用しています。うちの妻もこの時のニュース映像を恐怖とともに克明に覚えていました。

ここで気がついてほしいのが、「今から一時間前」という部分。この映像を撮影したのはテレビ局なのですが、これだけの特ダネを手に入れながら、あまりに衝撃的な映像のため放映することを自粛すべきか躊躇したそうです。パニックの引き金になりかねませんからね。
だから「今から一時間前」というニュースになったのです。

そして政府首脳はテレビを観るまで事故の情報を知りませんでした。つまり一般人レベルです。
現地でこの事象を把握していないはずがありません。対策本部と現地の情報共有が全くうまくいっていないことを如実に表していたシーンでした。

なお、原子力安全委員長の「あちゃ~…」ですが、これ、実際に言ったセリフだそうです。
「ベントすればいいんです」のシーンでも彼のあっけらかんとした態度は気になっていましたが、緊迫感も責任感も感じないセリフには怒りを感じてしまいました。

もっとも、彼に全ての責任をなすりつけるのはあまりに酷というものです。
なにしろ彼は原発製造業者でも、原子力発電所で働く人間でもありません。元東大教授、学者なんです。(もちろん原子力を研究していた専門家ではありますが。)
それに原子力発電所とは、一人が全てを把握できるようなシンプルなシステムではありません。何十人もの専門家が必要な、複雑な施設なんです。実際に今回の爆発も、誰も想像していなかった複雑な機序で起こりました。

燃料棒が加熱

周囲の物質と化学反応

その結果水素発生

容器に生じた亀裂から建物内に水素が漏れだす

水素は空気より軽いので、屋内上部に溜まり出す

特に換気もしていなかったので水素がどんどん濃くなる

何らかの火花で水素爆発

当時、世界中の専門家もこんな複雑な仕組みで水素爆発が起こるとは予想していなかった、と言われています。

日本壊滅の危機はいよいよすぐそこまで迫っていた。
災害対策本部の面々は、少しでも情報を求めて東京電力の本店に向かう。
そこで目にしたのは、信じられない光景。
東電の本店と、各支店の専門家、そして福島第一現地との、直通テレビ電話であった…。

災害対策本部が情報が足りない中で右往左往していたにも関わらず、東電本店はリアルタイムであらゆる情報を入手していました。そして、怠慢か、あるいは意図的にか、それを政府に伝えてこなかったのです。

民主党との関係

さて、物語はさらに破局への秒読みが始まっていくとこですが、あらすじはこれくらいにして、この映画と民主党の関係を確認してみたいと思います。

この映画を観たとき、僕は「震災直後、民主党も案外頑張ってたんだな~」という感想を抱きました。
事故対応が全く出来ない原子力保安院や原子力安全委員会しか頼る相手がおらず、現場からも東京電力の本店からも情報が上がってこない、そんな状況で精一杯頑張ったじゃないかと。

しかし、冷静に考えてみると、ちょっと民主党をヨイショしすぎかなとも思えます。

たとえば、この映画において「かっこいい人(危機に立ち向かった人)」「かっこわるい人(無能をさらけ出した人)」を分けてみると、こんな感じになります。

かっこいい人

  • 菅直人(民主党議員)
  • 枝野幸夫(民主党議員)
  • 寺田学(民主党議員)
  • 福山哲朗(民主党議員)
  • 原発の若手従業員(現場)
  • 原発の班長(現場)

かっこわるい人

  • 原子力保安院委員長(官僚)
  • 原子力安全委員会(学者)
  • 東電フェロー(東京電力本店)
  • 東京電力本店(東京電力本店)

う~ん…、思った以上に偏りました(笑)

映画を観ているときはそれぞれの肩書きまで気が回らず、「エラい人」「原発に詳しそうな人」としか思いませんでしたが、こうやって並べてみると、民主党推しが露骨ですね。

この映画は、なぜこんなに民主党よりなのでしょうか

監督:佐藤太

まずは映画監督、佐藤太氏。
彼のブログやTwitterも読んでみましたが、特に民主党寄りの思想を持っているとは感じられませんでした。

むしろ、彼が仙台出身であることのほうがポイントです。
東日本大震災で大きなショックを受けたであろう彼が、「あの震災について詳しく知りたい」とこの映画を撮ったことは容易に想像できます。

製作:橘民義

まず、「製作」とはどんなポジションか?
簡単に言えばプロデューサー「映画作りのお金と人を準備する仕事」です。

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一方、橘民義さんは複数の会社を経営する実業家。
彼の経営する会社の主な業務内容は以下の通りで、正直、映画とは接点のないお仕事ばかりです。

  • ゲームデバック請負の日本最大手
  • ソフトウェア品質検証
  • ネット風評監視請負

現在日本の映画界では複数の企業がお金を出し合う「製作委員会方式」が主流であり、一個人が一人で、しかも映画業界とは関係のない人が映画作りのお金を出すのは、非常に珍しいケースといえます。

そして、彼の政治信条ははっきりと民主党寄りです。

  • 過去に社会民主連合(後に民主党を結成)の公認をもらい、岡山県議会議員を務めていた
  • 菅直人が顧問を務める「自然エネルギー政策研究所」の代表を務めている
  • 民主党・辻本清美議員に350万円の献金をしたことも。
  • 著書:「民主党10年史」

これだけ民主党寄りの彼がわざわざ全ての製作費を出したのですから、当然「この映画は民主党を擁護するプロパガンダだ」との批判も出てきています。

また映画の中で、震災の後日談として民主党関係者が「俺たちは精一杯頑張ったが、マスコミが世間を煽り政権をひっくり返した。」と恨み節のようなセリフを言うシーンもありました。

この映画は本当に真実を描いたのか?
それとも民主党寄りにねじ曲げられてしまったのか?

菅直人の公式ホームページでこの映画のスピンオフを紹介されていたり、福山哲朗議員や辻本清美議員が上映会で挨拶をしていたり、民主党議員もこの映画は歓迎ムードのようです。

現場にいなかった自分がそれを証明することは出来ませんが、民主党贔屓の可能性は非常に高いでしょう。
距離を置いて冷静に判断する必要があると言えます。

スピンオフについて

この映画は3本のスピンオフ動画が製作されています。
おそらく、映画のボリューム上削らざるを得なかった部分でしょう。

ひとつが10分ほどのボリュームで、現在youtubeで閲覧できます。

まとめ

今回の事故は「誰が悪いか」というレベルの話ではなく、国の機能そのものが根本的な欠陥を抱えていたことを浮き彫りにしました。

この映画は、民主党寄りの描き方をされていることは念頭に置かなければいけませんが、一方で報道では出てきにくい貴重な民主党側の言い分でもあります。

ただ政府に憤慨するのではなく、反省を踏まえ、原子力発電所をどうすべきか建設的な議論になっていくべきだと思います。

今回の事故を踏まえ、原子力保安院と原子力安全委員会は解体されました。
新たに環境省所属の「原子力規制委員会」が制定され、原子炉の管理監督に当たっています。

新たな基準の元、国内59の原子炉のうち最稼働が決まったのは16基のみ(2018年7月現在)。そのほとんどは点検中などの名目で運転を停止したままです。

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