4歳とカンフーパンダ観て、死の概念を教えたら号泣された話

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いったいこの映画のどこに号泣要素があるのでしょうか。
そもそもカンフーパンダのあらすじからしてこんな感じ。

中国の桃源郷“平和の谷”が、極悪非道なタイ・ランに襲われる。そこで彼に対抗する勇者を選ぶことになり、選考試合ではマスター・モンキーらカンフーの達人たちがその技を競い合う。だが、彼らを差し置いて選出されたのは、体は大きいが小心者のパンダのポーだった。

yahoo映画より
う~ん、泣けそうにありません。
実際、デブなパンダがカンフーする愉快な映画です。
敵役のユキヒョウ・タイロンは獰猛な性格、恐ろしい腕前で復讐を誓う猛獣という設定ですが、攻撃方法は気孔をついて麻痺させることという優しさ仕様。
正義の北斗真拳のほうがよっぽど凶暴です。

当然犠牲者はゼロです。
感動して号泣するような山場もたいしてありません。
わりと平和でのどかでコミカルな話のはずです。

一体うちの息子に何が起こったというのでしょうか。





意外なところに“死”との出会いが

実はこの映画、敵からの攻撃による犠牲者はゼロですが、一匹だけ命を落とす動物がいます。
それはパンダの師匠のそのまた師匠、亀の老師。物語の序盤に静かに天に召されます。
死因は、老衰。

彼が亡くなるシーンは、わりと平和で幻想的なものでした。
ふと老師が「時が来たようです…」と呟くと、彼の体がふわ~っと無数の花びらで包まれます。
舞い散る花びらの向こうで、老師の体が天に向かって浮き上がり、ゆっくりと輪郭が薄れ、そして消えてゆきました。

当然、4歳の息子は不思議そうな顔で

「かめさん どうなったの?」

どうしたものかと思い、曖昧に誤魔化すことにしました。

「…天に召されたんだよ」
「てんにめされるって どういうこと?」

さっそくの追加攻撃。さすが4歳児です。

「えっと、死んじゃったんだよ」
「なんで しんじゃったの? なんで?」

ぐいっぐい攻めてきます。4歳児容赦ありません。

「生き物はみんな、いつか死んじゃうんだよ」
「!!!!」

どうやら、この事実が相当なショックなようでした。

思えば、彼は未だに人の死に対面したことがありません。
一歳になったばかりの頃におじいちゃんを亡くしていますが、あまり実感はなかったようだし。
亀老師が天に召され、消えてしまうシーンを観て、初めて「死」がどういうことか、わかったみたいです。

明らかに動揺し、涙目になっています。

「じゃ、じゃあ ぼくも しぬのっ!?」

必死な様子で僕をみる息子。
傷つかないように優しく語りかけるべきか。それとも本当のことを知ってもらうべきか。
この辺りで覚悟を決めました。

「…うん。すぐには死なない。でもいつかは死んでしまうよ」

死の恐怖を知った4歳児

「ウワアアァァァアアン! しぬの いやっ!いやだあああ!!」

大号泣です。ここ数ヶ月で一番のガチ泣きです。

「ヒック…なんでっ!?なんでしんじゃうのぉぉ!!?
ぼっ、ぼくっ ヒック… しぬのいやなのにぃぃ!!
ウワアアアアンン!」

ここまで泣くとは思いませんでした。
“死”とは何かを知って、ただでさえ動揺しているところに“自分もいつか死ぬ”と知ってしまい、完全に怯えています。

「ねえ、しんじゃうとどうなるの?!
ヒック… いなくなっちゃうの?
もうたたないの?(※立ち上がらないの?って意味と思われる)」

「…そうだね。死んだ人は、もういなくなってしまうよ。立つことは出来ないんだよ。」

「ウワアアアアアアン!!いやッ!!いやだあああああ!!」

突っ伏して号泣を続ける息子。
もう映画なんて一つも耳に入っていません。

「おとうさんもっ!?しんじゃうの?!」

「…うん。いつかはね。」

「!!!!
じゃ、じゃあ、[妹]ちゃんは?[弟]くんは!?おかあさんはしんじゃう…?」

「…うん。」

「いやだああああああ!!!みんなしぬのいやあああ
ぼくまだみんなであそびたいッ!!みんなだいすきなのにッ!!」

号泣の中、みんなが大好きとこぼした息子に優しさを感じました。
背中をさすり、怖いよね、でも大丈夫だよと慰めてもひんひんと泣き続けます。

「ヒッ…ぼく、まだ おもちゃで あそびたい…っ
まっ、まだっ おかし たべたいのにっ
ヒック なんで しんじゃうの!?」

「うん。そうだね。
お父さんといっぱいおもちゃで遊ぼう?
お菓子も晩ご飯も、美味しいの食べよう?」

「でっ、でもやだっ!!し、しぬの やだ…!!やだっ…!!」

あの名シーンの出番がきた

完全に死の恐怖に飲み込まれています。
4歳とはいえ、いなくなることの怖さはDNAに刻み込まれているみたいです。
彼をこの恐怖から救ってあげるには、どうしたらいいか…。

僕は彼を抱きしめ、とっておきの話をしてあげました。

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「いいか?

人間は誰でもいつかは死ぬ…。
 だから…みんな、

 一生懸命生きるんだよ…ッ!」

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「うわああん!しぬのいやッ!(キレ気味)」

あれーっ!?全然効かない!?Σ( ̄■ ̄;

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嫁の目も冷たい!!Σ( ̄■ ̄;

おかしい、感動間違いなしの名シーンのはずなのに!
俺なんてブックオフで立ち読みしながら涙流してたのに!!

「いやあああ しぬのいやああああ(号泣)」

「大丈夫、まだ死なないから」

「まだって!?じゃあいつなの!!?(逆ギレ)」

「まだまだまだまだ死なn」

「まだまだじゃないッ!!(げしっ)」

痛っ!う、うん、そうだねっ(;´Д`)」

「うわああああああん」

もう手の施しようがないくらいに泣いています。

そもそも、死の恐怖なんてものは、宗教レベルの救済があっても逃れられないものなのかもしれません。
僕も彼も基本的に無宗教だし。

あの世の話をすることも考えたし、誤魔化すことも考えました。
あるいはダイの大冒険を全巻読ませるとか。

でも、この瞬間は、彼にとってすごく意味のある時間な気がしたんです。
うまく話せるかわからないけど、精一杯話してみることにしました。

父として、息子と向き合って話してみた

「…えっとな、○○(息子の名前)」

「ぐすっ…えぐっ…」

「○○は、保育園でいっぱい遊んだりお勉強したら、小学校に行くだろ?」

「うん…ヒック…」

「小学校いって、もっと大きくなったら、中学校ってとこに行くんだよ」

「ちゅうがっこ…?」

「それでな…、もっともっと大きくなったら、高校生のお兄さんになって、大学生になって、それから○○は大人になるんだ。お父さんみたいに。」

「ぼくが…?」

「そう。お父さんのことみてごらん?○○もこんな風に大きくなるんだよ。」

「……。」

「それで…そしたらな、○○には子供ができる。□□(妹)ちゃんみたいなかわいい赤ちゃんだ。○○の子供だ。」

「…ぼくのあかちゃん?」

「うん。○○はその子といっぱい遊んだり、ご飯食べたりするんだよ。
それでな、今度はその子がだんだん大きくなるの。○○みたいに。」

「……。」

「お父さんはな、いつか死んじゃう。でも、怖くないよ。

 お父さんが死んじゃっても、お父さんの分まで○○がいっぱい美味しいご飯食べてくれるし、

 お父さんの分まで○○がお友達といっぱい遊んでくれるから。

 そしたらね、怖くないんだ。」

「……。」

「だから、○○が大きくなって、自分の子供が出来たら、○○もきっと怖くなくなると思う。
その子が、○○の分まで、いっぱい幸せになってくれるから」

「……。」

「えっと…わかるか…?」

「…………うん。」

「…まだ怖いか?」

「……ううん。」

その後、手を繋いで残りの映画をみました。

彼はどこまでわかっていたのだろう

彼があの話をどこまで理解できたのかはわかりませんが、不思議と落ち着いてくれました。
ただ泣き疲れただけかもしれません。自分が大人になり、子供が出来るという新事実に圧倒されていただけかもしれません。

でも伝わってくれたらいいなと思います。

その夜ベッドで眠るとき、「まだ怖いか…?」と聞いたら「ううん…」と首を振り、
隣に眠る赤ん坊の妹をそっと抱きしめてました。

*******

そうそう、『カンフーパンダ』は子供も気に入ってました。

落ちこぼれだったパンダがカンフーで大暴れ、悪者をやっつける、平和なストーリーでした。
パンダが弱くてだらしない様子も、その後覚醒してからめちゃめちゃ強くなった様もコミカルに楽しめます。
どんだけ技を磨いても、誰も傷つく様子がないお子さま対応っぷり。
ほのぼの系アクション映画とでもいうべき謎ジャンルかもしれません(笑)

「本当の自分」ってのが、この映画の根底にあるテーマではあったのですが…、まさかこんなところに成長のチャンスがあるとは思いませんでした。
うちの息子が少し大人に近づいた一日でした。
感謝です。

   









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