映画の伏線解説、カメラ解説と、僕ら二人の感想になります。
※盛大にネタバレを含みますのでご注意ください
僕「いやー、いい映画だったね」
嫁「うん。ひさしぶりに映画観てボロボロ泣いてしまった…」
僕「そういや『PSアイラブユー』観たときもボロボロ泣いてたよな(笑)」
嫁「こういうの弱いねん…」
伏線あれこれ
僕「映画観ながらもしかして…って思ってたけど、君は奥さんが死んじゃってたこと、気づいていなかっただろ?」
嫁「うん。最後まで全然気づいていなかった」
僕「えーっと、『なあ…。お前、どうして死んじゃったんだよ』のセリフまで?」
嫁「うん。超びっくりした(笑)」
僕「やっぱりそうだったのか(笑)」
嫁「あなたは結構早めに気づいてたよね?映画の途中で「事故なのかなあ」とか呟いてたし…」
僕「うん。そっちが怪訝なリアクションだったから、それ以上は言わなかったけど、危うくネタバレするとこだったね…。」
嫁「いつ気づいたの?」
僕「結構早め。弟子が初めて登場したシーンの『なあ、さっきあいつとすれ違ったか?』ってセリフでピンときてしまった」
嫁「それだけでよくわかったね!」
僕「昔、コレとは違うけど、似たようなプロットのお芝居観たことあるんだよ。だから“さくらと他の登場人物が同時に登場しない”って仕掛けに気づいちゃった。」
嫁「ほえー。全然気づかんかったわ」
僕「でも正直、気がついて損してしまった気がするなぁ。あのセリフで、色んな謎が一気にぶわーって解決する感覚を味わいたかった」
嫁「うん、ぶわーーーってなったで…!」
僕「ちぇ(´・ω・`)」
嫁「でも、気がついて観てたら、色々伏線に気がついたんじゃない?」
僕「うん。例えば文通相手の西田クンが家に訪ねてきた時、弟子が主人公に向かって『でもそのひと、さくらさんの…』って言いかけてるんだよね」
嫁「そんなセリフがあったっけ…」
僕「なにも知らないと、『でもそのひと、さくらさんのこと好きなんじゃないでしょうか…』って言いかけたと解釈しちゃうような言い方だよね。
けど、死んでるって気づいてると、『でもそのひと、さくらさんのこと亡くなったって知らないみたいで…』って言いたかったんだと気づくんだ。」
嫁「はー…そんなの全然気がつかなかったわ」
僕「どっちにも取れるミスリードだよね。うまい」
嫁「西田クンが『さくらさんが書いた手紙はあなたには読めない』って言われてカッとなったのも、奥さんが死んでたのなら、納得だよね…」
僕「そりゃ、そんなセリフ言われたらグサッとくるよね…」
嫁「新聞記事の切り抜きも続けてたね…けなげ…」
僕「ちゃんと切り取った新聞が散らばってたから、自分一人で続けてたんだろうねえ」
嫁「細かい伏線結構あるんだね」
僕「あと、オカマがお父さんだとか。」
嫁「それも気づいてたの?」
僕「うん、さくらさんが死んでるって前提で観てると、『絶対に私より長生きしないと、承知しないからね!!』ってセリフで、『この人もさくらの死を悲しんでるんだな…』って思わされて、次に『私にも妻と子供がいた』ってセリフでぴんときた。」
嫁「そだよね。子供が親より先に死ぬほど悲しいことはないもんね…」
僕「あと、細かいところだと最初のほうの『もう!部屋ぐちゃぐちゃじゃなーい』『じゃあお前が片づけろよ!』とか」
嫁「もう死んじゃってるから片づけられないもんね」
僕「主人公が服屋のお姉さんを誘うシーンとか、切なかった…」
嫁「どんなんだっけ」
「あいつさぁ、今日から旅行いってんだよね」
「誰が?」
「さくらだよぉ」
「・・・」
「だから俺今夜は独身♪」
「・・・」
「ねえゆりちゃん、俺が何を言わんとしているかわかるぅ?」
「なんだろなー」
「つれないなー」
「あはははは」
「・・・ねえ、今晩飲みにいこっか?」
「ほんと!?いこういこう!!」
ハッと後ろを振り返る
「どしたの?」
「いやさぁ、こういうときさくらの奴後ろからじーっと見てたりするんだよね~。こわいだろ(笑)」
「・・・」
「・・・やっぱ今日やめとくわ!」
「うん、そだね」
嫁「うわぁ、これは切ない…」
僕「もう、お姉さんの優しい視線が切なくてさ…」
嫁「そういえば、さくらさんがずーっと同じ服着てたのも伏線だったんだね。ヘンだと思ってたー。」
僕「え」
嫁「いつも白のブラウスとベージュのコートで…まさか気づいてなかったの?」
僕「……。」
嫁「ホント昔からそういうとこは鈍いよね…。」
カメラの話
僕「あ、じゃあ途中から家に飾ってあるカメラが減っていったのは気づいた?」
嫁「それは気づかなかった」
僕「最初はよくある小さなカメラ型のやつ。M型ライカっていうんだけど、これは新品で89万円くらい。」
嫁「は!?そんなにするの?」
僕「ちなみにレンズは別料金だぞ。ピンキリだけど、一本数十万円とかするものも多い」
嫁「……。」
僕「次はニコンの、たぶんデジタル一眼レフのフラッグシップ機(最高級機)。当時最新機種のD4だったら定価で65万円。もちろんレンズ別。」
嫁「……生活に困ったら、そりゃ売っちゃうわ…。」
僕「他にもレンズが二つの二眼レフ。マミヤのだけど、こっちはだいぶ昔のカメラ。
どちらかというとアンティーク、コレクションとしての意味合いが強くて、中古相場で数千円~数万円。これは売られなかったみたいだね。」
嫁「数千円じゃねぇ。」
僕「ちなみに、映画のメインとなった四角いカメラも、やっぱり高い!30年近く前の中古なのに二十万円はする」
嫁「へー」
僕「ハッセルブラッドというメーカーの中判カメラでね。高いし、重いし、フィルム入れても12枚しか撮れないけど、大きく引き延ばしたときの描写はとにかく素晴らしい、プロ御用達のカメラなんだって。」
嫁「へー」
僕「グラビア撮影でこれをもっていかないとモデルになめられるとか、あるカメラマンが独立するとき、まっさきに定額預金解約してコレを買ったとか、いろんな逸話があってさ」
嫁「へー」
僕「ほしい」
嫁「いりません」
僕「(´・ω・`)」
芝居が原作な影響?
僕「この映画も、お芝居がもとになったんだってね」
嫁「ああ、だからかぁ。観てるとき、やけにどのシーンもリビングばっかりだなあって思ってたんだ。」
僕「舞台だと場面転換するの大変だもんね。自然と同じ場所で物語が展開していっちゃう」
嫁「ほとんどリビング、神社だけだったね!」
僕「人の出入りの“クセ”も芝居みたいだったよね。一人がいなくなったら、次の一人が入ってくる感じ。きっと玄関=舞台下手(しもて)、シャワー=舞台上手(かみて)だったんだろうね」
嫁「あと、クリスマスの夜に水川あさみがやってきて、『みんなダメダメじゃん!』って言った後に、いきなりヨヨヨヨって自分語り始めたよね。あれはちょっと違和感すごかった(笑)」
僕「たしかに、無理があったな(笑)
お芝居あるあるの“皆それぞれつらさを抱えてるんやで…!”って描写だね。背中向けあって等間隔に立ってね。」
嫁「普通あんなきまずい状況で自分語りせえへんで…」
僕「俺やったら『あのその、お取り込み中すみませんでした、僕はこれで…』って退散するわ…」
嫁「私やったらとにかく黙って存在消すわ(笑)」
嫁「あと、豊川悦治がすごく大げさな演技だったね」
僕「俺この人あんまり観たことないけど、もとからそういう人なの?」
嫁「さあ…」
僕「『じゃあどうやったら忘れられるんだよッ!』とかね」
嫁「それそれ(笑)芝居臭かったねえ」
僕「原作になったお芝居観てて、それに引っ張られちゃったのかもね」
嫁「なるほどねー」
僕「さくらさんは、かわいかったよね。」
嫁「うん!薬師丸ひろこすっごくかわいかった!!年齢敵にはおばさんだし体型はぽっちゃりしてるのに、かわいーって思った」
僕「たしかにおばちゃん体型なのに(笑) 女は愛嬌だねえ。
あと、弟子の男の子。なんかいい味だしてたねー」
嫁「濱田岳くん?私もあの役者さん好きだよ。いつもすごく印象に残るキャラクターを演じる人だよね」
ラストの解釈
僕「僕がこの映画で一番素晴らしいと思うのは、ラストシーンのさくらさんの幽霊が現れたシーンだね」
嫁「どういうこと?」
僕「前のシーンで主人公がさくらさんに『なにか俺の想像もつかないこと言ってくれよ』って言ったけど、何も言わなかったよね?」
嫁「うん、あったねそんなシーン」
僕「あれは『自分の想像の範囲内のセリフしか言わない → やはり彼女は想像の産物でしかない』ことを象徴しているシーンなんだよ。」
嫁「そうかー…」
僕「でも『結局主人公の妄想でした』じゃいくらなんでも寂しいよね。そこで、最後のシーンが活きてくるんだ。主人公、最後は彼女のこと見えてなかっただろ?」
嫁「うん、部屋をキョロキョロ見回して、『消すぞー』ってろうそく吹き消してたね」
僕「彼女がいるのに、主人公には見えていない。つまりラストシーンの彼女だけは想像の産物なんかじゃなかったんだよ。」
嫁「ああっ!なるほど!今までのさくらさんは主人公の妄想だったとしても、本当のさくらさんの幽霊はずっと主人公の傍にいたんだね!」
僕「そう!そうなんだよ!あのシーンがあるかないかで、観終わった後の幸せ感が段違いだよ。ホントにいいシーンなんだよね…。」
嫁「じゃあ結局主人公はおかしかったってことかな?」
僕「正常な判断は出来てて、さくらが死んだことも理解できてる。客観的にみて、自分が狂ってるとは全然思えない。けど、なぜかさくらの姿だけは見えてしまうって状態だね。」
嫁「あとニンジン茶は?あれどういう意味?」
僕「さくらが死んでから、たぶん彼はニンジン茶をまずいって思ってなかったんだ。たしか水川あさみをナンパしたときも『一年ぐらい飲むと、だんだんクセになるんだ』ってイケメンボイスで言ってただろ?」
嫁「言ってた!イケメンボイスで!」
僕「でもそれって、やっぱりどこかおかしかったってことなんだ。自分では正常なつもりでも、ちゃんとした味すらわかってなかった。
それが、最後にニンジン茶飲んだときは『まずい…』って気づいてた。正常な状態に戻ったし、今までがおかしかったことに気づいたってことじゃないかな」
嫁「なるほどねー!そういう演出だったわけか!」
もし、事故に遭わなかったら…?
僕「もし事故に遭わなかったら、二人はどうなってたのかな。あのまま離婚してたのかな。」
嫁「結局あの二人は仲良しなんだし、本当に離婚するまでのどこかで踏みとどまるんじゃないかな」
僕「俺は結局主人公が素直になれず、離婚してしまうような気がする。離婚と死別じゃ、重みが違うし…」
嫁「うん、そうかもしれない。けど、やっぱり、二人は最後まで一緒にいると思うよ。一時は別居とかするかもしれないけど、そのうち耐えられなくなって、絶対どこかでヨリを戻すと思う。だって、お互いのことが好きなんだもん。」
僕「そんなもんかなぁ」
嫁「そんなもんだよ」
コメント
自分も豊川演じる俊介と同じ、子供も作らずには仕事はしてるがそこそこやって自分の好きな事ばかり…
今もラスベガスで一人遊んでましたが、本当は一人妻を残して一人旅をしてしまった自分がいてなんとなくこの映画を観てしまいました。
帰ったら自分も今度は愛妻家になれる気がしました。
コメントありがとうございます!
ラスベガスで遊ぶなんて、羨ましい限りです!(笑)「親孝行したいときには親は無し」みたいなもんですかね。男にとって妻のありがたみは居なくなって初めてわかるものなのかも知れませんねw
今気付いたのも決して遅くはないと思います。ぜひ、素敵な愛妻家になってください!