カンヌの選出基準とスタンディングオベーションについて

よく「日本の映画がカンヌ映画祭に出品され、観客から○分間のスタンディングオベーションを受けました!」なんてニュースがあります。

ふと疑問に思ったのですが、それってどれくらいすごいのでしょうか??

なんだか、毎回「スタンディングオベーションを数分間!」しているような気もしますし…(笑)

気になったので、調べてみました。

応募資格

まずはカンヌに応募する方法ですが、実は一般公募

なんと誰でも応募出来ちゃいます!

一応、長編部門だと手数料が6700円ほどかかります。

思ったより手頃なお値段…!

ちなみに条件は以下の通り。

・英語あるいはフランス語で視聴できること。
・長編部門は60分以上、短編部門は15分~60分であること。
・カンヌ国際映画祭当日が世界初上映となること(それまで公開もしないし、他の映画祭に出品&上映しない)
・フランスでの劇場公開を拒まないこと。

つまり理論上は、

・15分ちょっとの短編映画を作って
・英語字幕をつけて
・カンヌ当日までWEB公開とかしなければ

あなたのつくった作品はカンヌ国際映画祭に応募できるし、選出される可能性だってあるのです!!!

出品基準

…ただし当然ですが、これはあくまで理論上の話(笑)

ニュアンスとしては「素人がM1グランプリに応募したら予選突破できた」みたいな状況ですね。(難易度は別として)

誰でも応募できるM1でも厳しい予選会があるように、カンヌの応募作品も厳しい選別を受けます。

2019年の第72回カンヌ国際映画祭の短編部門は4240作品の応募がありましたが、出品作品として選出されたのはわずか11作品のみでした。

予選通過率は、たったの0.26%ですね。

さて、カンヌに応募されたたくさんの作品は、どうやって出品作品として正式に選出されるのでしょうか?

審査方法は一般公開されていませんが、おそらく予選審査員が審査をし、評価されたら上の予選に行ける形式でしょう。

そういえば、知人がM1の予選審査員をやったことがあり、「素人の微妙な漫才を延々聞き続けるのはかなりの苦痛だった…」とゲッソリしてました(笑)

こうして、20作品前後の長編映画が“コンペティション部門”の正式出品作品として選出されます(2019年は21作品)

いわばこれで“予選通過”です。

さらに、予選通過には漏れたものの、優れたオリジナリティを持つ作品数点は“ある視点部門”へと選出されます。

いわば「次点だけど、見所があるね賞」です。

なお短編映画は10作品前後が“カンヌ短編部門”に選出されます。

受賞の基準

さて、コンペティション部門における最優秀賞“パルムドール”を受賞するのは、どんな作品でしょうか?

これは明確な基準が提示されているわけではないのですが、ネット上にはこんな情報が飛び交っています。

芸術性

芸術とは何ぞや、と言われると深い問題になってしまうのですが、演技や映像、物語を通して、人の心に何かを訴えるための映画であることです。

まあ、“娯楽映画(興奮やトキメキのためにみる映画)じゃないこと”ぐらいで考えた方がわかりやすいかもしれません。

フィロソフィー(思想哲学)

哲学的というか、人類のあらゆる層に対しての普遍的な思想哲学があることです。

そのため、人類にとってもっとも普遍的なテーマである“愛”を題材にした作品が選ばれることが多々あります。

例『愛、アムール』、『アデル、ブルーは熱い色』、『万引き家族』

オリジナリティー

これはわかりやすいですね。今までにない新しさを提供していることです。

パクリはもちろん、オマージュやインスパイアすらも、思想的な意味がない限り好ましくないとされています。

例『ツリーオブライフ』、『ダンサー・イン・ザ・ダーク』

審査員長

カンヌは良くも悪くも審査員長の好みが大きく反映されると言われます。

それゆえ、毎年「誰が今年の審査員長を務めるのか」も大きなニュースになるのです。


クリント・イーストウッド審査員長の選んだ『パルプフィクション』、

型破りな皮肉屋・クエンティン・タランティーノ審査員長の選んだ『華氏911』、

不思議なファンタジー大好きおじさんティム・バートン審査員長の選んだ『ブンミおじさんの森

最後に、スタンディングオベーションについて

では気になるスタンディングオベーションについて。

いわく、カンヌでは上映に際して観客の態度が非常にシビアだとも言われています。

いわく

「いい作品には何分間もスタンディングオベーションをするが、面白くない作品には平気で上映中に席を立つ」

と。

また、問題作・賛否両論と言われる作品には、上映終了後に大勢の観客からブーイングが起こったりもしています。

一方で、

「スタンディングオベーションは慣例となっている」

「スタンディングオベーションがあるからと言って、特別な作品というわけではない」

という意見もあります。

実際、米国アカデミー賞等ではほとんどスタンディングオベーションが起こらないのに対し、カンヌでは基本的にスタンディングオベーションが行われます。

また、カンヌ映画祭では監督や主演俳優を招待して上映しているという事情もあります。(アカデミー賞は表彰式のみ)

そのため、特にわざわざ異国から招いた場合や、実績のある監督には、拍手を持って迎えるのが一般的な礼儀となるのです。

先ほどブーイングをされたような賛否両論の作品だって、ブーイングをする観客もあれば、熱心にスタンディングオベーションをする観客もいました。

総合して考えると

カンヌ映画祭には基本的にスタンディングオベーションをする文化があり

かつ、最終審査まで残るレベルの作品なので、「誰もスタンディングオベーションをしたくない」「誰にとっても駄作」ということはなく、

よって、どんな作品もスタンディングオベーションで迎えられる

と言うことになります。

実際、スタンディングオベーションをする観客の多さや時間の長さは、受賞の可能性とは関係ありません。

たとえば、「ワンスアポンアタイム イン ハリウッド」ではなんと20分間ものスタンディングオベーションを受けましたが、

それはお祭り好きなタランティーノ監督がふざけて舞台袖から出たり入ったりした結果、ウケた観客が長時間拍手をし続けたからです。

一方で、賛否両論となった「ツリー・オブ・ライフ」や「パルプ・フィクション」は、大勢の観客からブーイングを受けたものの見事パルム・ドールを獲りました。

やはりスタンディングオベーションと長さと作品の評価は相関しないようです。


そんなわけで、

あなたの作品もカンヌに『応募』することはできますし、

本選まで残れたとしたら、やはりスタンディングオベーションは頂けるのです(笑)

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