韓国映画『はちどり』のタイトルの意味考察/英語版タイトルの面白み

映画中には『はちどり』が登場しませんでしたし、監督のインタビューなどを確認してもどのような意味を持たせたのかは言及がありません。

監督はどのような意図で『はちどり』というタイトルをつけたのか考察したいと思います。

ちなみに韓国語タイトルは『벌새』でそのままハチドリという意味です。

なお、日本と同様、韓国にも野生のハチドリは生息していないため、ハチドリに対するイメージに大きな違いはないと思われます。

①ちいさくてかわいい

花から花へ飛び回って蜜を吸うハチドリの仲間は総じて体が小さく、特にハチドリの一種であるマメハチドリは体長が6センチ、体重2g(一円玉二枚分!)と鳥類の中でも最小です。

この小さく愛らしいイメージをティーンエイジャーの主人公ウニに投影させたのかもしれません。

キム=ボラ監督は、完璧なウニ役の女優としてパク=ジフをみつけるのに3年の時間を要したというほど主人公のイメージを大切にしていたようです。

彼女の表情やたたずまいの透明感が重要なのももちろんですが、小さく愛らしいイメージを感じさせる素敵な女優さんでした。

②ハチドリの羽ばたき

ハチドリの大きな特徴として、花の蜜を吸うとき、足で捕まることなくその場に羽ばたき続けて静止(ホバリング)できることが挙げられます。

実はホバリングが出来るのは鳥類でもハチドリだけなんです。

この秘密はハチドリの驚異的な羽ばたき回数にあります。
なんと1秒間に55回!
1分間じゃなく、1秒間に55回ですよ!
ツバメの羽ばたき回数が秒間7回、スズメが17回ということを考えると並外れています。

逆に言えば、ハチドリは“必死に羽ばたき続けないと蜜にありつけない”というジレンマを抱えています。

さらに、必死で羽ばたく代償としてすぐにエネルギーが枯渇してしまうため、次の花へと移って蜜を吸わないと生きていけません。

小さな愛らしさに加え、このようなハチドリの習性が、他人との繋がりを求めて一生懸命日々を生きるウニとかぶってみえることから、映画のタイトルにされたのだと考察されます。

冒頭のアパートの扉をたたくシーンや、何度も「お母さん!」と呼びかけても振り向いてもらえないシーンなど、彼女の“振り向いて欲しいのに”という深層心理がすごく象徴的に描かれていましたね。

母親だけでなく、恋人、後輩、親友、そして塾の先生と、ウニは他人との繋がりを求めては傷つき、そしてまた次の花へと向かわざるを得ませんでした。

一緒に見た妻は「周りの人間がひどい人ばかりだ」とこぼしていましたが、僕自身は「未成熟な中学生の時って、こんなひどい言動普通にあったよなぁ…」と思い出したりもしていました。

とかく美化されがちなティーンエイジャー時代ですが、よくよく思い出してみれば傷つくことはいっぱいあったし、それも含めて今はいい思い出です。

余談:英語版タイトル

英語版タイトルは『House of Hammingbird』

『ハチドリの家』という意味になります。

単純に『Hammingbird』じゃないんですね…。

特に英語で『House of Hammingbird』という用語があるわけではありませんが、ウニの家族関係にスポットを当てていると解釈できます。

また、ウニの住んでいた団地の矮小さを比喩しているとも考えられます。

日本の住宅をウサギ小屋と形容するようなものですね。

実際、ウニの団地の間取りはそこまで手狭な感じはしませんでしたが、『ホームアローン』が出来そうなアメリカ住宅とは比べようもありません。

それに、あの部屋は日本人から見ても家族との物理的な距離が近く、逃げ場がない印象を受けました。

広い家に住んでいる欧米の感覚からすると、あの狭さが印象的だったのかもしれません。

もっとも、2013年に『Haimmigbird』という別の映画があったから重複を避けただけ、というのが本当の所かもしれませんが(笑)

元・特殊部隊のジェイソン=ステイサムが復讐の鬼となり、大切な人の殺害に関わった者への報復以下略というストーリーです。大体想像つきます。

映画のタイトル付けではしばしばこういうバッティングが起こるため、知恵を絞って別のタイトルをつけてたりするのが面白いです。

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