仮にも映画好きを名乗るブログでこんなことをいうとお叱りを受けそうですが、実はスターウォーズがなぜこんなに人気なのか理解できませんでした。
ええ、正直に言います。
たしか高校生の時(もう10年以上前ですね笑)にレンタルビデオでスターウォーズ旧3部作を借りてきたのですが…どうもハマれませんでした(ーー;
殺陣はカッコよくないし、セットはボロいし、ストーリーも陳腐だし。
まぁ、たしかに物語に登場するキャラクターたちは妙に魅力的だったんですけど。
それ以来、ずっと不思議だったんですよね。
なんでこんなにスターウォーズ人気なの?みんなほんとに面白いと思ってるの…?って。
そんなわけで、それ以来僕はスターウォーズについていろいろと調べてきました。
そうしているうちにこの映画の魅力について、わかったことが二つあります。
スターウォーズの魅力とは、「世界観の深さ」と「当時の衝撃」だったのです。
世界史ならぬ「スター・ウォーズ史」の魅力
ずばり、他の映画と比べ、このシリーズが圧倒的にすごいところは設定の奥深さです。
突然ですが、僕はwikipediaが結構好きです。
映画の製作の裏話だったり、歴史上の人物・事件をざっくりとまとめた読み物もいいです。でも事実でも何でもないただの“設定”を読むのも好きなんですよね。
架空の武器のうんちくだったり、空想上の生き物の生態、登場人物の過去だったり…。
たとえば
「ライトセーバーには流派ともいうべき6つの“フォーム”が存在し、それぞれに得意不得意や相性があって、オビ・ワンが使っているのは防御・カウンター重視の“ジュドー”なのだが…」
とか、
「チューバッカの武器は金属の矢をビームエネルギーでコーティングして打ち出すもので、威力が高いぶん反動もでかい。ウーキー族の強靱な肉体がないと使いこなせない」
とか!
こういうの、読んでるだけでわくわくしませんか!?
こういうの映画を観てるだけでは絶対わからないんですよね。(へっぴり腰でライトセイバー振り回してるだけかと思ってたわ)
けど、知っていればちゃんと意味が見えてくる。映画がもっと面白くなるんです。そんな知識がスターウォーズには山ほどあるんです。
それというのも、スターウォーズは有名な映画9部作(現在は7まで発表)だけでなく、膨大なスピンオフ作品が発表されているからです。
物語の後日談、登場人物それぞれのサイドストーリー、世界観を共にする別の逸話…。なんと100を越えるスピンオフが出版されているのです!!
もちろんこれらの作品はスター・ウォーズシリーズの産みの親ジョージ・ルーカス本人が書いたものではありません。
しかし、ジョージ・ルーカスが率いるルーカス・フィルムは妙に寛容で、細かい設定を勝手に付け加えても、登場人物の過去の話を勝手に作っても、ちゃんと「公式」認定してくれるんです(笑)
こうやっていろんな人によって新しい設定がどんどん追加されていき、非常に奥深い「スターウォーズワールド」を構築しているのです。
それにしても、他の人が書いた作品も公式と見なすって不思議な感覚ですね(笑)
日本であれば、原作者が書いたものでない場合、これは「世界観は一緒でも、原作の物語とは相互関係のないもの」、パラレルワールドとして扱われます。
マンガのノベライズであったり、他の作者の書いたスピンオフなんかがそうですね。
でもアメリカでは、そもそも「コミックは複数人で作るもの」という意識が強いです。たとえばアメコミでは作画担当、脚本担当、着色担当など分業・会社化されており、原作者も複数人が携わることが多いんです。
そういった事情で「原作者が書いた作品でなければ正式な設定とは言えない!」という空気が薄いんでしょう。(ディープな世界だとそういう原理主義ファンもいそうですが)
なお、『エピソード7/フォースの覚醒』の公開に伴い、従来のスピンオフと映画の間に矛盾が生じてしまいました。
そこでルーカスフィルムは新たに、『エピソード7』以降の新設定に合致した作品を「正史」(Canon=正典、真の作品)、従来のスピンオフを「レジェンズ」(Legends=伝説)と名付けました。
つまり、スピンオフは「市井の間で流布している“伝説”だから、真の歴史と矛盾している場合もあるんだよ」ってことですね。なるほど。
公式に作られたスピンオフ映画『ローグワン』。これは当然「正史」である。
圧倒的な衝撃のSF作品だった
そしてもうひとつ重要なのは、公開当時の状況です。
実はスターウォーズは、当時にしては画期的な迫力ある映像だったのです。
まず1977年に公開された映画「スター・ウォーズ」の予告編を観てみましょう。
…どうだったでしょうか。
この映像を観た正直な感想はこんな感じだと思います。
「ショボい。」
「迫力がない。」
「つくりものっぽさ、ハンパない。」
「なんかいろいろ残念…。」
うん、仕方ない。だって本当だもの。
最新技術を駆使したど迫力のSF作品(↓こんなの)を観慣れた我々にとっては、当時の映像はどうしても迫力不足に感じてしまうのでしょう。
参考「スターウォーズ エピソード7」(2015)
ただ、いくらショボいといっても、それはあくまで現代の我々にとってです。当時のSF映画事情はどんな感じだったのでしょう?
当時に公開されていた他の映画の映像を観て、確認してみましょう。
まずは、前年の1976年に公開されたSF映画「地底王国」です
おお…(--;
この安っぽいセット…コントみたいですね。奥行きの無さがすごい。
時折出てくる怪獣?恐竜?のしょぼさにはくらくらします。
続いて1974年の「未来惑星ザルドス」。主演がショーン・コネリーと本気な作品。
0:27あたりにでてくる安っぽい仮装みたいな彼らは何なんだ…
妙に深いテーマ性と説教くさいオーラを出してるわりに、チープ。すごくチープ。
これが当時を代表するSF映画なんだぜ…。
こちらはかなりレベルが高いほう。スターウォーズの2倍・2400万ドルもの製作費をかけて作られた超大作、「キングコング」(1976年)です。
悪くはないんだけど…いかにも作り物感溢れるキングコングさん。うちの近所の遊園地にこんなアトラクションあったぞ。
いやー…、こうして並べてみると、認識を改めねばなりませんね。スター・ウォーズ、(当時としては)頑張ってるやん!
登場人物の衣装や舞台のセットも、他の映画と比べればずいぶんマシです。
C-3POのロボットっぽいくせに人間くさい独特の動きにも感心してしまいます。
また、スターウォーズの特徴として、非常に画期的な「誰でも楽しめる宇宙冒険活劇」であったことがあげられます。
なにしろ、当時のSF映画といえば、超常現象やら怪獣やら宇宙人が現れて、人間自身はパニック陥って右往左往、あるいは主人公が勇気を出してそれに挑む…というストーリーが定番でした。
主人公はあくまでただの人間なんですね。
ま、当時の映像技術で映像化できる限界もあったのでしょう。
また当時はSF映画と言えば「難解で」「テーマが重く深く」「オタク向け」、まあ、今の日本のSF小説のような立ち位置でした。よっぽど好きな人で無いと楽しみづらい。
しかしスターウォーズは、その小さな枠組みからも、見事に飛び出して見せました!
敵は宇宙を支配する「悪の帝国」というわかりやすさ!
主人公は「フォース」を操る「ジェダイの騎士」!かっこいい!
宇宙空間を戦闘機が飛び交い、ライトセーバーを使った近未来的な戦いで敵を討つ!ヒュー!
そう、誰もが楽しめて、わくわくするSFなんです。
当時の映画事情
また、当時アメリカ映画界では「アメリカンニューシネマ」と呼ばれる作品群が人気を誇っていました。
代表作は「俺たちに明日はない」「タクシードライバー」などなど。
アメリカンニューシネマの特徴は「社会の不条理を描き出す」「深いテーマ性」「説明的すぎない(=難解)」「アンチハッピーエンド」といったものです。重い…(・ω・`)
いわば映画通好み、マニア向けなところがありました。
歴史をみてみると、当時アメリカは挫折の時期でした。
「赤狩り」と呼ばれた共産主義者への集団ヒステリーに踊らされてしまったことを悔やみ(※)、大義なき泥沼の戦いとなりつつあるベトナム戦争へ疑念を抱いていました。
要するにみんな、「ハッピーで最高なアメリカ合衆国なんて幻想だ」と思い知り、打ちひしがれていたんです。
そんな中、暗く憂鬱なニューシネマの虚無感が、共感を集めていたのでしょう。
※ 赤狩りについては以下の記事で詳しく解説しています
しかし、ジョージ・ルーカス監督はすっかり下火になってしまった娯楽映画の復権を考えていました。元々彼は特撮SF映画が大好きだったんです。
「映画ってもっと楽しいもんだろう?
俺はそんな映画が作りたいんだ!!」
そんな彼の情熱が、スター・ウォーズ製作の原動力となりました。
面白い逸話があります。
スターウォーズを作り終えたジョージ・ルーカスは同世代の映画監督や関係者を招き、試写会を行いました。
ところが、上映後、一同の間には気まずい空気が流れ、そして口々にスターウォーズを酷評しはじめました。
特に、当時映画界で人気を博していたブライアン・デ・パルマ監督の意見は辛辣でした。「ダースベイダー、えらく陳腐な悪玉だな」
「フォースの設定が便利すぎない?ご都合主義?」
「冒頭の状況説明長すぎない?」
「レイア姫の髪型はなんだあれ。菓子パンかい。」
「ようするに、映画として認められない」
…まさにボロクソです。他のみんなも次々と、「きっとこの映画は失敗するに違いない」と言いきりました。
でもそんな中、スティーブン・スピルバーグ監督だけはこういったそうです。「いや、一億ドルは儲かるんじゃないかな」
いや~、感慨深いですね!さすが、スピルバーグ監督!!
彼の慧眼通り、スターウォーズは爆発的なヒットを記録しました。
市民が映画に求めていた物は、「不条理」や「虚無感」ばかりではなかったんです。みんな、心の底ではエンターテイメントでハッピーエンドな映画を待ち望んでいたんです。
折しもベトナム戦争が終結し、アメリカには解放感が溢れていました。その上昇気流に乗り、スターウォーズは宙高く舞い上がりました。
物価上昇を考慮した場合、スターウォーズは現在でもなお歴代二位の興行収入にランクインしているそうです。
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さていかがだったでしょう?スターウォーズがなぜ魅力だったのか、僕も少しわかってきた気がします。
もう一度観なおしてみようかな~。