世界三大映画祭と呼ばれるカンヌ、ベルリン、ベネチア国際映画祭。それぞれの賞には受賞しやすい作品の傾向とかがあるのでしょうか?
なんとなく、アカデミー賞は娯楽映画が多くてベルリンは小難しいイメージがあるのですが…。(ドイツの賞だからそう思うのかな?笑)カンヌやベルリンは特に「こんな賞」というイメージがわきません。
個人的に気になったので色々調べてまとめてみました。
ベネチア国際映画祭(イタリア)
最高賞は金獅子賞。
元々は美術展覧会の映画部門として始まったためか、芸術性が高いアート系作品、映像美や演出の面で際だった作品が評価されやすいです。
しかし近年は商業映画の比重も高まっており、ハリウッド作品も多く取り上げられています。そのため、ベネチアで評価された作品はアカデミー賞にノミネートされやすいです。(たとえばララランド等はベネチアでも作品賞にノミネートされています。)
二時間の長編映画が中心となっており、日本人のイメージする「映画」と近いです。
「観て感動する映画」が評価されやすい映画祭といえます。
各賞ピックアップ:監督・ばんざい!賞
これで正式な賞の名前なんです(笑)
現役で、将来に渡って活躍が期待される映画監督を対象に贈られる賞です。一回目の受賞者でもある北野武監督の映画『監督・ばんざい!』にちなんで命名されました。
ベネチア国際映画祭では各賞に偉大な先人の名前を冠する歴史があります。新人俳優賞であれば「マルチェロ・マストロヤンニ賞」。
北野武もそのひとつに並んで称されているようで、なんだか嬉しいですね!
ベルリン国際映画祭(ドイツ)
最高賞は金熊賞。
ドイツ人の気風なのか歴史的背景なのか、ガッツリ社会派な作品、哲学的な作品が評価されやすいです。また、社会派な作風にマッチしやすいドキュメンタリー映画も数多く取り上げられる傾向にあります。
また意外なようですが、短編映画に強いのもこの映画祭の特徴です。短編映画専門の部門をもっているのほどで、非常に尖った短編映画が高い評価をされています。
一言で言えば「考えさせられる映画」を大切にする傾向にあります。
各賞ピックアップ:子ども映画賞
ベルリン国際映画祭で特筆すべきは、子どものための映画を表彰する「子ども映画賞」があることです。
審査員はもちろん全員子供たち。14歳以上のティーンズが審査員をつとめる14Plusと、4歳以上の子供が審査員をつとめるKplusの二部門が存在します。子どもを一人前の審査員として真剣に扱うところが、ドイツ人らしくていいですよね。
最優秀作品には金熊ならぬクリスタルベアが進呈されます。
カンヌ国際映画祭(フランス)
世界三大映画祭とみっつ並べて称してはいますが、その中でもカンヌ映画祭は知名度・影響力の面で抜きんでており、映画祭の中でも特別な存在です。「いつかはカンヌに出品」というのが世界中の映画人にとっての憧れなのです。
映画としての完成度を大切にしており、高品質・文芸的な作品が評価される傾向にあります。
必ずしもハッピーエンドとはいえない作品が評価されたり、やや一般受けしにくい芸術系、渋い作風を好む玄人目線な一面もあります。
これは僕の印象なのですが、家族、夫婦、恋人の間など「愛」が根底にある作品が多いような気がします。
いわば、「カンヌは映画の純文学」と言えるでしょう。
ベルリンもベネチアも毎年違った数名の審査員が審査しているので、「カンヌの特徴」とまでは言えません。
各賞ピックアップ:ある視点部門
「独自で特異な若き才能を認めて援助する」という「ある視点」部門をもつのが特徴です。
いってしまえば新人賞ですが、カンヌではこれがひとつの部門として独立しているほどに、とっても大切に取り扱われています。
カンヌの権威と伴って、映画界では若手の登竜門として非常に重要な意味を持っています。
アカデミー賞(アメリカ)
他の映画祭と比べて大きく違うのは、ハリウッド作品に大きく偏っていること、娯楽作品に対して好意的なところ。この辺はみんななんとなく知っているので解説の必要がないかもしれませんね(笑)
他に大きく違うのは審査の仕組みです。三大映画祭はどれも数人の審査員によって審査がされますが、アカデミー賞の審査員はなんと六千人以上。大部分がハリウッドの業界関係者である「映画芸術科学アカデミー」の会員によって審査されます。
そのため「アメリカの世相」「ハリウッドの思想」に大きく影響されやすい特徴があります。(例:人種差別を扱う『ムーンライト』が『ララランド』を抑えたり、『アルゴ』が作品賞を受賞したり)
また映画祭とは違って「劇場公開済みの映画」が対象となっている点もポイント。どうしても審査員の脳裏に興行成績や観客の評判といったものがよぎってしまうのか、興行成績がよい大衆作品が受賞しやすい傾向にあります。
必ずしも芸術性の高さ、作品の完成度だけで選ばれませんが、ある意味「一般市民の感覚」に一番近いのもこの賞。また、自分が観た映画がノミネートするというドキドキを味わえるのもアカデミー賞だけです。それゆえ、他の映画祭にはない独特の盛り上がりをみせてくれるのです。
各賞ピックアップ:メイクアップ・ヘアスタイリング賞
こんな言い方をしては大変失礼なのですが「え!そんな賞もあったんだ」と思うような賞です。
実はアカデミー賞の各賞は、たとえば脚本賞であれば脚本家(のアカデミー会員)が、監督賞であれば監督の、それぞれ専門家のアカデミー会員が審査を行うのですね。
そして、アカデミー会員には俳優や監督以外にも様々な映画関係者がいます。音響、衣装、メイク、視覚効果…。それらの方々が専門的な視点から「この映画のメイクはとってもよかったね!」「脚本はアレだけど音響効果はすごかったよ!!」と各賞を選んでいくわけです
それら普段は目立たず映画を支えてくれる裏方さんたちをしっかり評価していこうという姿勢、とっても粋な考え方ですね。
なお、現在「スタントマンの賞も作ってよ!」という声も上がっているそうです(笑)