スーパーサイズミー2ホーリーチキン、現在店舗は閉店?日本での実態も解説

チェーン展開はどうなった?

映画の中ではチェーン展開の可能性もあるかのようにほのめかされていましたが、実際はそうなりませんでした。

そもそも監督自身がファーストフードが消費者の健康を害していることを告発するための映画、そのための店舗ですので、いくら客が来るからといっても、健康に悪いファーストフードを売り続けるのは彼の主義に反することでしょうしね。

現在店舗はどうなってる?

そもそも、映画で写っていた店舗も、実際にはわずか三日間だけの営業で閉店しています

冷静に考えて、映画撮影のための臨時店舗と考えるべきですね。

現在、少なくとも2022年8月の時点では、跡地は建物が残ったまま空き店舗になっています。

グーグルマップでも出てきます。

なお、youtubeに跡地の動画もあったりします。

日本での実態

仕事柄、養鶏場の実態に詳しいので、日本では映画同様なのか、解説したいと思います。

実際の所、日本もアメリカとたいした違いはありません。
同じ品種の鶏を使って、同じような飼い方をしています。

ただ、映画を観て少し気になったのは、「ファーストフード企業がああいう飼い方をさせている」と言わんばかりの描き方だったことです。

なにもファーストフード店だけがああいう飼い方の鶏肉を使っているわけではありません。
スーパーで買ってきた鶏だろうと、地元の肉屋さんで地鶏を買ってこようと、基本的には同じです。

まず鶏の品種に関しては、欧米と全く一緒の品種を使っています。というか海外からヒナを輸入しています。

注:厳密には祖父母世代に当たるヒナを欧米から空輸し、日本国内でせっせと繁殖させ、3世代目にあたるヒナを各農家に出荷しています。一部では地鶏をはじめとした日本独自の血統もありますが、大半は欧米からの輸入品種が占めています。

そのため、映画で描かれたような鶏の特徴は日本でも変わりません。

  • 通常、鶏は成鶏に達するのに4 – 5か月かかるが、ブロイラーは40 – 50日で成鶏の大きさに達する
  • しかし過剰な体重増で、3割近くの鶏は歩行困難になる
  • 心臓にも負担がかかり、100羽に1羽は心臓疾患で死亡する
  • うかつに抱き上げると容易に骨折するので、丁寧に両手で抱え上げることが必要

なお、映画を観ていて微妙に違うなーと思ったのは出荷までの期間です。
映画では「6週間で出荷」と言っていましたが日本では一般的には8週間です。

これは国の違いと言うより、用途の違いです。

フライドチキン用にはお肉が柔らかく、小ぶりな物が好まれるため、早めの出荷をしているからです。
8週間だとやや大ぶりになり、調理用やスーパーなどではこちらが好まれます。

飼い方に関しても映画と同様、日本でも室内から出さない飼い方をむしろ推奨しています。
これは感染症対策(特に鳥インフルエンザ対策)が最も大きな理由です。

養鶏場は感染症に対して非常に脆弱です。
なにしろ、体重増最優先の偏った食事に加え、運動不足、きわめつけは大量の鶏を密室・密接・密集の3密で飼育しているわけですから、ひとたび鶏の群れに感染症が入り込むと猛威を振るってしまうのです。

一方、養鶏場では病気の鶏が出ても、基本的には治療をしません。
しょせんは一羽数百円で出荷される商品ですから、手間暇をかけて一羽一羽治療をするなんてコストに見合いません。厳しい世界です。

また、「一度病気になったけど抗生物質を使って元気になった鶏なんて買いたくない」という消費者サイドの意識もありますし、そもそも国が定めたルールとして薬を使用したら数日間は出荷ができなくなります。
数週間で出荷する養鶏業界において、数日間待機すれば規格サイズからずれてしまい、販売価格はがた落ちです。

そんなわけで、鶏たちを病気から守るためには、ヒヨコ時代に打ついくつかの予防接種、あとはとにかく病原菌に触れさせないことが重要になってきます。
だからこその完全室内管理なんですね。
国も、鳥インフルエンザ対策として外界と一切接触しないよう、養鶏農家に対して厳しく指導しています

別に屋外に出してもよいけれど、別の野生動物と接触しない環境が望まれています

あるいは、屋外で健康に育て、自然の餌を食べ、飼育密度も低く保つことで、感染症にかからない健康な鶏を育てるやり方もあります。消費者のイメージする真に『ナチュラル』な鶏ですね。

しかしその場合、費用が跳ね上がります。

まずは手始めに、広い土地を確保しないといけません。
広大な土地の管理のために人件費も増大します。卵をとる採卵農家でしたら敷地のどこかに産んだで有ろう卵を探して歩き回る必要もありますね。
さらに、運動する分太りにくいので、健康的ではありますが、肉用としては育成効率が低下します。
屋外で飼育すると野生動物に襲われる危険も無視できません。その分のコストも価格に上乗せしなければなりません。
専門的な話になってきますが、日照時間を人工的に管理できないため、産卵率も顕著に低下します。

放牧は自然に優しいのかもしれませんが、お財布には非常に厳しい贅沢な育て方なのです。

もちろん、実際にそのような飼い方で鶏を育てている農家も存在します。しかし放牧された鶏は費用が跳ね上がり、普通の鶏肉の数倍という高級品になっています。卵は1パック680円とかします…。

そんなわけで、鶏の飼い方については、ファーストフード企業を糾弾するだけでなく、放牧された鶏の卵や肉を進んで買うことも重要です。
「安いから」と消費者がそちらを選んでいる限り、養鶏場もその希望に応えざるをえないのです。

※この映画も参考になります。

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