トリビア①:モデルとなった事件があった
この映画はウィリアム・アイリッシュの短編小説「裏窓」を原作としていますが、映画化に当たって大きく肉づけされています。
その際、ふたつの実際の殺人事件に影響を受けたことをヒッチコック監督は語っています。
ひとつが、ドクター・クリッペン事件。もうひとつはパトリック・マーン事件です。
ドクター・クリッペンは、以前から悪妻に虐げられていました。妻はクリッペンを奴隷のように扱い、次々と男を作ったそうです。
しかしクリッペンが外に愛人をつくると自分のことを棚に上げ激昂。彼と愛人に対する罵倒を繰り返すようになりました。
ある日とうとう、クリッペンは妻を殺害してしまい、バラバラにして自宅の地下に埋めます。
- 悪妻を殺害し、バラバラにした
- 夫が愛人と逃亡した
- 妻の貴金属を質屋に売って金に換えた
これらの部分が映画と共通しています。
クリッペンが使用したシャベル(ロンドン警視庁犯罪博物館所蔵)
もう一つのモデル、パトリック・マーン事件にも愛人が登場します。
ただし、殺害されるのは愛人の方です。
セールスマンで既婚者のパトリック・マーンは、たいそうな女好きだったそうで、若くして結婚したのに浮気を繰り返し、その資金を捻出するために詐欺を起こして捕まったり、強盗事件を起こして捕まったりという悪党でした。
ついには愛人とトラブルになり殺害してしまいます。
彼は包丁とノコギリで遺体を解体し、「トランク」と「帽子箱」に隠しました。
なお、愛人とトラブルになった原因は彼女の妊娠でした。
無惨にバラバラにされた遺体はいくつも見つかりましたが、彼女の子宮は最後まで見つからなかったそうです。
パトリック・マーン事件の現場を再現したドールハウス
トリビア②:マットレスを引っ張る夫婦
映画の中に「ベランダにマットレスを敷いて寝る夫婦」が出てきます。
雨が降り出した時、大慌てで部屋の中にマットレスを入れようとして、どたばたと夫婦喧嘩をしてましたね。
実はあれは、ヒッチコック監督のイタズラでした。
彼は妻に対し「左の窓からマットレスを入れろ」とこっそり指示をしておき、夫には「右の窓からマットレスを入れろ」とこっそり指示していたのです(笑)
その結果、お互いの指示を知らない二人は別々の窓にマットレスを入れようとして、引っ張り合いになったのです。
これを知ってからもう一度映画を観てみると、面白いですよ。
最初は「あれ?」という様子だったのに、徐々に焦りだし、最後には本格的にイライラしているのがわかりますw
リアルなわけですねー。
トリビア③:セットに住み込んでいた役者
この映画のすごいところは、アパートに囲まれたあの空間を、実在の場所で撮影するのでなく、スタジオ内に丸ごと建築して再現したところです。
セットは幅30メートル、長さ60メートルにも及び、高さは5階建てに相当します。
さらには実際に使えるように電気、水道まで通したというのだから驚きです。
主人公の部屋から全ての部屋や通りが覗けるように緻密に計算されており、建設には数ヶ月がかかりました。
あまりにセットが大きいため、「ヒッチコック監督はずっと主人公の部屋にいて、別の部屋の役者には無線で指示を出した」とか「バレエダンサー役のジョージア・ダーシーは一ヶ月に及ぶ撮影期間中、バレエダンサーの部屋に実際に“住んで”いた」などの逸話が残されています。